2022.12.21

倉谷滋のお勧め<まとめ第3弾>

倉谷滋先生お勧めのクラッシック論文を紹介します。

21. Goodrich, E. S. (1915). Memoirs: The Chorda Tympani and Middle Ear in Reptiles, Birds, and Mammals. Journal of Cell Science 242, 137–160.
これは典型的な比較形態学の論文。だが、発生パターンの違いが重視されている。動物によってこんなにパターンが違うのかと認識させてくれる。

22. Graham, A., Koentges, G. & Lumsden, A. (1996). Neural Crest Apoptosis and the Establishment of Craniofacial Pattern: An Honorable Death. Molecular and Cellular Neuroscience 8, 76-83.
菱脳の分節構造のうち、第3,第5のロンボメアが神経堤細胞を発するのかどうか、90年代、これがニワトリ胚発生研究の領域で大問題になったことがある。なぜだろうか。科学論争の本質を知るためにも興味深い。

23. Hogan, B. L. M., Thaller, C. & Eichele, G. (1992). Evidence that Hensen's node is a site of retinoic acid synthesis.Nature 359, 237–241.
この論文が書かれた一部始終を私はそばで見ていたが、そのときの経験がのちに非常に役に立った。90年代のいわゆる「発生生物学の黄金時代」を象徴するような心意気の論文と言えるかも知れない。

24. Jeffery, W. R., Strickler, A. G. & Yamamoto, Y. (2004). Migratory neural crest-like cells form body pigmentation in a urochordate embryo. Nature 431, 696–699.
Gans & Northcuttによる「New Headセオリー」は、神経堤とプラコードが脊椎動物を定義すると述べ、結果、神経堤の起原を極める研究が脊椎動物の起源を語ると認識された。その一方でその前駆体がホヤに存在するという研究が相次いだ。その最初のひとつがこれ。

25. Jollie, M. (1981). Segment Theory and the Homologizing of Cranial Bones.The American Naturalist 118, 785-802.
脊椎動物頭蓋要素の発生起源は動物によって違うのか。その背景にどのような予測があったのか。古典的な比較形態学的コンセプトの終着点を示す論文のひとつだが、それが正しいというわけではない。

26. Kuntz, A. (1910). The development of the sympathetic nervous system in mammals. Journal of Comparative Neurology and Psychology 20, 211-258.
一言でいうとKuntzによる一連の論文は、組織発生学的に末梢神経系の発生を推論したもので、ほぼ正しくそれらが神経堤に由来することを見抜いている。実験発生学が明らかにしたのは、彼の観察眼の正しさだったのかも知れない。

27. Langille, R.M. & Hall, B. K. (1988). Role of the neural crest in development of the trabeculae and branchial arches in embryonic sea lamprey, Petromyzon marinus (L). Development 102, 301–310.
ヤツメウナギ幼生の軟骨頭蓋の一部が神経堤に由来すると述べた論文。今にして思うと、これは進化発生学が勃興する前になされたユニークな試みだった。が、この動物の梁軟骨はいまでは中胚葉由来とされている。

28. Le Lièvre, C. S. (1978). Participation of neural crest-derived cells in the genesis of the skull in birds. Development 47, 17–37.
鳥類胚の頭蓋の由来については1993年のCouly et al.が引かれることが多いが、ここにあげたLe Lièvreの知見がNodenの見解に近いことはあらためて注目すべきだろう。この論文の中のmesectodermとは、ectomesenchymeのこと。

29. Lufkin, T., Mark, M., Hart, C. P., Dollé, P., LeMeur, M. & Chambon P. (1992). Homeotic transformation of the occipital bones of the skull by ectopic expression of a homeobox gene. Nature 359, 835–841.
Hox遺伝子のKO実験が興味深い表現型をもたらしていた真っ盛りの論文。ある意味、典型例と言える。脊椎動物頭蓋のうちでも後頭骨はもともと椎骨であったものが変形して頭蓋に二次的に組み込まれたものとされる。進化とメタモルフォーゼを学ぶのに最適。

30. Mallatt, J. (1984). Early vertebrate evolution: pharyngeal structure and the origin of gnathostomes. Journal of Zoology 204, 169-183.
ヤツメウナギの鰓葉は軟骨支柱の内側にあり、サメのものは外側に結合している。ならば鰓弓骨格は両者において相同ではない?あるいは、神経堤細胞が移動と分布を変えたのか?相同性を発生学的に読み解く第1歩としてお奨め。

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2022.12.16

NGS発生生物学現場の会2022 参加報告書 氏部浩太(青山学院大学)

青山学院大学 理工学研究科 博士後期課程 1 年
氏部浩太
今回、初めて本会のような合宿形式での会に参加しました。研究者としてこの業界に入ってから 4 年弱経ちましたが、コロナの影響によりその 4 年のうち 2 年間はオンラインでの学会や懇親会にしか参加したことがありませんでした。そのため、顔を合わせて発表を聞いたり議論したりする機会がなかなかなく、学生間のネットワーキングの機会も限られていたことから横との繋がりがありませんでした。今年になってようやくコロナ感染の拡大が多少収まりつつあるため、対面形式での学会が増えてきました。それにより、多少ながらコミュニティーを築くことができつつありました。その絶好のタイミングに「NGS 発生生物学現場の会 2022」が開催されると聞き、迷うことなく参加をすることに決めました。参加前はどのような方々いるのか硬い感じの会なのかなど不安なところがありました。実際に参加をしてみると、参加者の中には NGS に触れていないビギナーの方から上級者の方々まで幅広くいました。私は NGS に触れてはきた中堅レベルであったため、学んだり多少教えたりする立ち位置にあり様々な点でとても私自身にとってプラスになる会でした。講演の中には企業の方がいらっしゃり、企業側はどのようなことを研究者に求めているのか、企業での研究はどう進めていくのかなど普段では聞くことのできない貴重なお話を聞くことができました。また、参加者の方々と一緒にいる時間が長い分、通常の学会より議論等ができる時間を長くとることができました。それにより、普段の学会では議論できていなかった事細かいところまで議論することができ、自身の研究に関してもっと勉強や知識をつけなければならないと再度実感させてもらいました。また、修士や博士の学生だけでなく他大学・研究機関の先生方とのコミュニティーも多少なりとも築くことができました。さらに、NGS を扱われてきた先生や先輩研究者の方々がはじめて NGS に触れる際に、どこで苦労をしてきたのかなどこれまでのキャリアのお話を聞くことができとても有意義な時間を過ごすことができました。これらの点で、合宿形式の会ならではの雰囲気やコミュニティー作りを経験することができるとても良い会であり、参加して本当に良かったです。来年度以降にもこのような会が開催されるようであれば、是非とも参加したいです。
2022.12.16

NGS発生生物学現場の会2022 参加報告書 クォン スンジュン(九州大学)

九州大学 システム生命科学府 5年一貫制2年
クォン スンジュン(KWON SEUNG JUNE, 権 昇俊)
発生学会のニュースレターから「NGS発生生物学現場の会」が開催されることを知って、すぐ行きたいと思った。私はwetの実験も好きだが、バイオインフォマティクスの解析にも以前から興味を持っていて、Bulk RNA-Seqなどのデータ解析を行っている。しかし、dry解析については正規の教育を受けたことがなく、本やインターネットで独学してきたため、解析を行いながらも「このやり方で大丈夫かな」という不安を常に抱えていた。研究室内にNGS解析を行っている人は私一人で、質問や議論がしたくても、する人がいない。このような状況で、NGSを用いた研究を行っている研究者及び学生が集まり、各自のデータ解析手法や「悩み」を共有するというシンポジウムは、私にとってとても魅力的なイベントだった。メールが来たその日に申し込んだことをまだ覚えている。

二日間の短い期間だったが、本当に密度の濃い、有益な時間だったと思う。「自分はまだビギナーだから、色々聞きに行こう」という軽い気持ちで開催を楽しみにしていたのだが、実際行ってみたら、期待していた以上に楽しかった。5分間の参加者全員の研究紹介からワールドカフェと招待講演まで、全てが面白い時間だったが、一番好きだったのは一般発表の時間だった。全員の発表者の発表後に、見たことのないほどの活発な質疑応答の時間が、すごく楽しかった。私も、wet・dry両方初心者でありながら色々質問したのだが、私みたいな修士課程の学生から、経験豊富な先生まで、様々な分野の人がNGSで一つになって楽しく議論するところを、目の当たりにすることができた。また、コロナの影響で、大学院に進学してから研究室外で発表する機会が少なかったのだが、今回の一般発表が私にとって初めての学外発表になり、自身の研究について今まで気づいていなかった視点から、色々なアドバイスを受けることができた。最後に、同じ年代の学生からシニアの先生まで、交流会も含めてたくさんのお話ができてすごく楽しかった。お互いを「○○さん」と呼ぶことも、学生からして先生との距離が縮まることを実感することができた。

このような有益で面白いシンポジウムを開催してくださった、日本発生生物学会の関係者の皆様に感謝申し上げます。
2022.12.12

NGS発生生物学現場の会2022 参加報告書 眞鍋柊(東北大学)

東北大学大学院 医学系研究科 発生発達神経科学分野
眞鍋 柊
指導教員の先生が、私にこの研究会の存在を教えてくださった。その助教の先生はある学会での鹿島先生の美しい発表に感動し、その発表の最後に鹿島先生が宣伝されていた本研究会を私に強く推薦してくださった。神経発生に関する研究を行っており、かつRNA-Seqデータを用いていた私にとっては、「NGS」「発生生物学」と冠した本研究会は強く興味を引いた。さらに、現在所属の研究室でNGSデータを用いて研究を行っている学生が私を含め2人だけであったため、類似した研究を行っている同世代の学生と会って、研究の進捗や、さまざまな悩みを共有したいという気持ちがあり、本研究会に参加させていただくこととした。参加するにあたり、発生生物学会からの旅費支援を利用させていただくことができ、金銭的な心配はなかった。
実際に2日間、本研究会にて非常に充実した時間を過ごすことができたが、本研究会を有意義たらしめたのは、特にその「規模」によるものが大きかったと感じている。学生・若手研究者15名程度に対して、専門家の先生が10名程度もいらしたために、自分の口頭発表の際にもほとんどすべての先生に質問・コメントをいただくことができ、有益な情報を研究室に持ち帰ることができた。他の方々の口頭発表においても、時間を超過するほどの活発な議論が繰り広げられており、そのいずれもが今後の自分の研究の参考になる充実したものであった。またその規模ゆえに、交流会や昼食時などに、本研究会に参加されたほとんどすべての方とお話しさせていただくことができた。私が修士課程に進学して以来、新型コロナウイルスのまん延によりほとんどすべての学会等がオンラインで行われてきたため、今回、素晴らしい研究発表をする同世代の学生の活躍を知り、直接お話をさせていただけたことは非常に良い刺激となった。
まとめると、私は本研究会に参加することで、自分の研究の方向性に関して重要なアドバイスをいただき、同世代の学生の皆様の研究成果に刺激を受け、また悩みを共有することもできた。NGS発生生物学現場の会で過ごした2日間は非常に有意義な時間であった。最後に本会の開催にご尽力いただいた鹿島誠先生および発生生物学会の皆様に感謝申し上げます。
2022.12.12

NGS発生生物学現場の会2022 参加報告書 中村光希(岡山大学)

岡山大学環境生命科学研究科 博士後期課程1年
中村光希
私がこの研究会に参加した目的は、一つは自身の研究で行っているNGS解析で直面する課題を解決することでした。私はNGS解析に触れてまだ半年も経っておらず解析に必要な基礎知識が不足しており、解析が十分に進められない状況でした。また、もう一つは同年代の方々との交流を通してNGS解析に限らず研究の進め方や研究との向き合い方を知ることでした。今回、発生生物学会の会員ではなかったため参加するか迷っていました。しかし、研究会概要を拝見して今の自身がまさに必要としている研究会だと思い、参加を決めました。
研究会に参加して、参加者との交流や疑問の共有を通して様々な解析手法の理解やNGS解析に必要な知識だけでなくNGS解析を進める上での心得を学ぶことができました。
招待講演において、田崎 純一さんの講演では基礎研究の経験をどのように企業で社会に役立てることができるかを知る貴重な機会になりました。そして、企業ならではの考え方、研究の進め方も知ることができました。安齋 賢さんの講演ではスラウェシ島の多様なメダカのゲノム解読の話が興味深く、ゲノム解読の過程を詳細にお話いただき大変勉強になった。私は公開ゲノムデータを利用するばかりですがゲノムが解明されていない生物を解析することの面白さを知りました。尾崎遥さんの講演ではシングルセル解析や空間トランスクリプトームなどバイオインフォマティクスの最先端を知ることができました。情報解析が発生生物学の発展にいかに重要かを感じることができました。鹿島 誠さんの講演ではゼブラフィッシュの研究内容から他検体RNA-seqの魅力に触れることができました。さらにNGS解析を進める上での心得を学びました。
ワールドカフェでは参加者の方々にNGS解析で誰に相談してよいかわからないことなども気楽に質問でき、参加者とのつながりを作ることもできました。
一般発表では、私は発表しませんでしたが、NGSを用いた多種多様な研究内容を聞き、NGSが様々な場面で利用されていることを感じました。私は植物の研究をしているため、普段触れることの少ない哺乳類や魚類などの生物種の研究内容を聞くことができ、NGS解析以外にも知識を得ることができました。さらに質疑応答では、交流会やワールドカフェで参加者との交流がすでにあったため、気負わず積極的に質問でき、大変勉強になる一般発表でした。また、公開討論会ではマニアックな話題やデータの管理方法なども挙がり、非常に勉強になりました。
この研究会に参加して、NGS解析に対する疑問や理解不足な点を明らかにすることができました。また、会員ではなかった発生生物学会での研究会であった点が参加前には少し不安もありましたが、実際に参加して、NGS解析の基礎の話から特殊な解析方法まで幅広く学ぶことができただけでなく、同年代の方々との交流や、様々な面白い研究そして今後の自身の研究に生かせるお話を聞くことができました。誰もが簡単にNGS解析を始められる今だからこそ、そのうちの一人としてNGS解析に対する悩みを抱えていた私にとってこの研究会は大変貴重な機会になりました。最後に、このような機会をくださった日本発生生物学会、NGS発生生物学現場の会2022の関係者の皆様に心から感謝申し上げます。
2022.12.12

NGS発生生物学現場の会2022 参加報告書 金子杏美(筑波大学)

筑波大学グローバル教育院ヒューマニクス学位プログラム2年
金子杏美
私は、副指導教員である尾崎遼先生がNGS発生生物現場の会で講演をされるということで、発生生物学会には所属していないのですが、この会の存在を知りました。wetの研究が主で、バイオインフォマティクスに関しては勉強中の身でしたので、考え方やできることなどを学べれば、と思い参加させていただきました。
実際に参加してみて、自分とは違うモデル生物を利用している人や、発生生物特有のトランスクリプトームを明らかにしている実験の紹介など、とても刺激になりました。一般発表では、私の研究分野は、参加者の方々とは違う睡眠という分野だったため、わかりやすく説明するというような良い練習になりました。また、知識の豊富な方々から、自分ではどうにもできなかったサンプリングによる傾向が補正できるはずだ、というようなことや、そもそもChromiumを利用したsnRNA-seqでは目的の細胞を十分量得ることは難しいため実験手法を変えた方がいいのではないか、といったこと、組織学的にトランスクリプトームを得られる新規手法についても教えていただき、研究室に持ち帰って検討したいと考えています。また、中身がブラックボックスのような気持ちで行っていた解析が、先生方の開設によって明らかになったり、論文をpublishする際にはきちんと明示しなければいけない数字などについても明確になったりと、今後のモチベーションに繋がりました。
また、先生方の講演も大変参考になりました。とくに、企業研究者の田崎さんの講演は、今後、就職かアカデミアの道か、を考える上でとても勉強になりました。大学では、動物実験はたくさん行われていますが、企業特有の動物実験を減らさなければいけない、というような事情は、マウスを利用した実験を主に行なっている自分としては、企業に就職する場合は動物種を変えなければいけないのかなど、将来を考えるきっかけとなりました。さらに、鹿島先生のプレゼンのプログラミング初学者へのアドバイスで、時間と労力を削るための手間は惜しむな、といったことをおっしゃっており、私自身、出力されたリストなどを、ついエクセルでいじりたくなってしまうので、肝に銘じたいと思いました。
 この度は、このような、初学者のための会を開催していただき、進歩の早いNGS分野の様々な技術や解析法・活用法について情報交換・議論する場を用意していただきありがとうございました。また、機会がありましたら是非参加させていただきたいです。
2022.12.12

岡田節人基金 フランス海外派遣報告書 矢ヶ崎怜(京都大学)

京都大学大学院 理学研究科
矢ヶ崎怜(D3)
この度、岡田節人基金若手研究者海外派遣助成にご採択いただき、フランス・ストラスブールで行われた第3回日仏合同ミーティングに参加いたしました。コロナウイルスの流行のため、これまで海外の学会に参加する機会に恵まれず、今回が初めての海外学会となりました。ホテル予約やパリからストラスブールに向かうための高速鉄道の予約など、行く前からドキドキではありましたが、日本から参加するメンバーでのslackを立ち上げていただき情報を共有していただいたため、滞りなく行うことができました。

ストラスブールはパリから高速鉄道で2~3時間ほどのところにあり、心配とは裏腹に、とても治安のよい街でした。4日間ホテルからストラスブール大学に歩いて向かい、なんとなく海外での研究生活も想像できたような気がします。

今回のミーティングでは、私は蠕動運動に特化した腸収縮性オルガノイドの解析についてポスター発表を行いました。発表時間は2時間に設定されていましたが、英語で説明、ディスカッションをしている間にあっという間に終わっていました。まだまだ足らない部分は多いですが、英語で相手の言ったことを理解し、答えられたというのは自信につながりました。今後も臆することなく英語を話し、もっと伝えたいことが適切に伝えられるようにしていきたいと思います。また、一緒に日本から参加した先生方にもたくさん研究を聞いていただき、有意義な時間を過ごすことができました。いただいたアドバイスを今後の研究に生かしていきたいと思います。

その他に、このミーティングで参加して良かったことを3つ挙げたいと思います。
1つ目は、1つの部屋で口頭発表を聞くという形をとっていたということです。それにより、自分の研究に近いものから、あまり聞く機会のなかった分野の研究など、発生に関する幅広い研究を聞くことができました。馴染みのない分野の発表は自身の知識の幅の狭さを知るよいきっかけでした。

2つ目は、数時間に1回、コーヒーブレイクがあったことです。この時間を有効に活用し、発表者の方のところへ行って質問したり、色々な方の研究を聞いたりすることができました。また、ミーティング終了の翌日、コーヒーブレイクで知り合ったフランスの学生がパリを案内してくれました。生物学という共通点があるからこそ、仲良くなれたように感じています。

3つ目は、笹川財団からの助成をいただき、参加学生の多くが同じホテルに泊まっていたことです。日本の学会であればなかなか話しかける機会というのはありませんが、慣れない海外で夜遅くまで学会もあるため、みんなで一緒に帰ろうと声を掛け合って生活しました。夜には先生方と一緒にご飯に行かせていただき、山あり谷ありの研究人生を伺いながら、楽しい時間を過ごすことができました。これからも学会等で会うことができると思いますので、みんなに負けないように頑張りたいと思っています。

最後になりましたが、様々なご支援をいただきました、林先生をはじめ多くの先生方にこの場を借りて感謝申し上げます。
2022.12.12

岡田節人基金 ISDB海外派遣報告書 河西通(東京工業大学)

東京工業大学 生命理工学院
河西通(助教)
この度は岡田節人基金からご支援をいただき、2022年10月16日から20日にわたってInternational Society of Developmental Biology(ISDB)の主催する19th International Congress of Developmental Biologyに参加しました。

ISDBは1968年に発足した国際組織で、Cells & Development(2020年まではMechanisms of Development)やGene Expression Patternsの発行母体として我々にも馴染みがあります。ISDBはこれまで、日本のJSDBやアメリカのSDBをはじめとした各国の発生生物学会同士の交流を促進するため、およそ4年に1度の周期で大会を開催してきました。また大会中にはRoss G. Harrison Awardの授与式も執り行われます。1989年には本基金の設立者である岡田節人先生が同賞を授与されました。大会の開催地はこれまでアジア・オセアニア、アメリカ、ヨーロッパの各地を巡っており、今年はポルトガルの南岸に位置するリゾート地・アルガルヴェでした。白亜のホテルや住宅が立ち並び、とてもリラックスした雰囲気で大会に臨むことができました。
ISDBへの参加を申し込んだ6月当初、私は国外の研究者と対面でディスカッションできることへの大きな期待と、未だ尾を引くコロナ感染症に対する不安の両方を抱えていました。罹患そのものに対する恐れもありますが、学会滞在中のわずかな期間で万一感染してしまうと帰国が許可されず、数週間にわたりポルトガルのホテルに足止めされてしまう可能性があったからです。ただその後9月になり、帰国時のPCR検査による入国規制は緩和され、帰国が滞る可能性はほぼなくなりました。とはいえ、ポルトガルでのコロナの流行状況やマスクの着用状況はわからないままです。全世界から人が集まる国際学会で、しかも4年周期のところが今年は1年遅れの開催となり、一層密になるのではないかと危惧して、せめてもの感染予防グッズとしてN95マスクを買い溜め、大会当日に備えました。
いざ大会が始まると、現地には約600人もの参加者が集まり、広い学会会場のあちこちで朝から晩まで議論が活発に行われたため、出国まで抱いていたコロナへの不安をよそに、とても刺激的な5日間を過ごせました。

大会の一番の収穫はなんと言っても、面白い仕事をする海外研究者や、普段読んでいる論文の著者に直接会えたことでした。論文は十分な推敲を経て理性的な筆致で書かれますが、著者本人の人となりや情熱、また研究の背景にある考えは対面でこそ伝わってくるものです。今回Ross G. Harrison Awardを受賞されたカリフォルニア工科大学のMarianne Bronner博士は、記念講演としてご自身による神経堤細胞研究の経緯を概説されました。講演の中で、氏の研究展開に対する静かな興奮、そして理路整然と講演される様子に、大袈裟に聞こえるかもしれませんが私は感動しながら拝聴していました。エキサイティングな研究発表をされるかたは他にもたくさんいらっしゃり、うち何人かとは実際に顔を見ながらディスカッションでき、知り合いになることができました。
また、各国から参加者を募る国際学会ゆえに、世界の発生学研究の潮流を知ることができた点も大きな収穫です。なかでも、大会初日に行われたオルガノイドにまつわる講演セッションは興味深く拝聴しました。2008年に理研の笹井芳樹博士のグループが大脳皮質オルガノイドを報告して以来、さまざまな臓器のin vitro作成法開発や疾患の作用機序解明など、オルガノイドはおもに医学的方面で大きな進歩を遂げてきた印象がありました。今回の大会ではそのオルガノイドを道具として用いて基礎生物学的な問いに迫るエキサイティングな研究がいくつもあり、発生生物学の流れの変化を体感しました。

ポスターセッションも大賑わいで、ありがたいことに私は本大会でポスター賞をいただくことができました。今回、ポスター筒をロストバゲージすることがないよう、初めて布ポスターを使用したのですが、布地にも共焦点顕微鏡の蛍光画像が精細に映ること、持ち運びがとても楽なことに驚きました。国際学会でポスター発表される方にはお勧めします。
当初懸念していたコロナについてですが、会期中もやはり会場内外で猛威を振るっていました。私が個人的にディスカッションしたいと思っていた研究者を含め何人かの発表者がオンライン参加や欠席となったほか、私自身もポスターセッションか、あるいは円卓を囲む晩餐会で感染してしまい、帰国直後から1週間の自宅療養を余儀なくされました。いまなお感染対策と研究交流の両立は想像以上に難しい、と身をもって実感した次第です。

今回のISDB大会を通じて、国際学会でしか味わえないアカデミックな興奮を経験することできました。この経験を日々の研究に還元し、よりよい科学をつくっていければと思っています。渡航を支援してくださいました日本発生生物学会関係者の皆様に深く感謝申し上げます。
2022.12.08

岡田節人基金 ISDB海外派遣報告書 小野沙桃実(東京工業大学)

東京工業大学 生命理工学院
小野沙桃実(D1)
岡田節人基金 若手研究者海外派遣助成のご支援のもと、ポルトガルのサルガドスで開催された、第19回国際発生生物学会 (International Society of Developmental Biology; ISDB2021) にポスター発表で参加しました。
 
 国際発生学会は4年に一度行われる大きな学会で、去年開催予定のところを新型コロナウイルスの影響で延期された経緯から、名称はISDB2021となっています。5日間のレクチャー、シンポジウムに加え、なんとポスター発表は約400人もの研究者、学生が参加しており、国際学会の規模の大きさを実感しました。国内の発生学会で他に日本から参加する人を探したものの見つからず、当初は独りで渡航する予定でしたが、偶然10月からラボに赴任した河西助教もISDBに参加すると伺い、渡りに船ということでありがたく付いていかせていただくことになりました。
 博士課程1年目の私にとって、貴重な経験をいくつも得ることができたISDBへの参加は、大変意義深いものとなりました。まず、対面でのポスター発表は初めての経験でした。学部4年生で研究を始めてから1年足らずで、新型コロナウイルスの流行により対面学会は中止されたため、今までに参加したすべてのポスター発表はオンラインでした。オンラインでは、ポスター内容は口頭発表無しでも伝わることが重要ですが、対面でのポスター発表は、プレゼンで相手の理解度に合わせて説明することが、最も重要であることに気が付きました。英語でのプレゼンに不慣れであったというのありますが、大勢のポスター発表者がいる中でポスターに立ち寄ってくれる人を少しでも増やすことについて、もう少し工夫の余地があると感じました。今回のポスターセッションは1時間半と非常に短い時間しか与えられなかったため、どんなに頑張っても会場の端では5人ほどしか立ち寄ってもらえませんでしたが、ポスターセッション以外の時間にも、知り合った人に自分の研究内容を短く説明する機会は何回もありました。全くそのような場面を想定していなかったため、しどろもどろな説明しかできませんでしたが、そこで自分の研究課題の面白さについてよりプッシュできるようになると良いことに気付くことができました。
 また、このISDBは私にとって初めての国際学会でした。日本の学会は動物学会、進化学会、発生学会などへの参加経験から、ある程度雰囲気を掴めていたように思います。そこで、世界的にはどのような実験手法がトレンドなのか、また発生学に対してどのような視点でアプローチすることが評価されているのかを知りたかったため、ISDBへの参加は非常に楽しみでした。レクチャー、シンポジウムでは、誰もが興味を持つようなクエスチョンの立て方やプレゼントークの上手さを実感し、非常におもしろく、とても勉強になりました。日本語では、多少プレゼンが分かりづらくても母国語だからわかっていたこともあったのだと気が付き、日本の学会ではあまり意識してこなかった、クエスチョンの上手な立て方について意識することができました。また、思いがけない収穫は、世界中の博士学生やポスドク、またISDBに参加していた他の日本人研究者と知り合えたことです。ヨーロッパに住む学生はアクセスの良さからか気軽に学会に来ているような印象で、国を軽々と超えるフットワークの軽さに驚きました。さらには、国際学会に来るような学生は研究に全て情熱を注いでるものかと思いきや、それぞれ趣味を持っていて、プライベートも研究も颯爽と両立させていくスタイルに共感と憧れを覚えました。日本人研究者とは、かなり分野が離れている人もいたため、逆に国際学会のような場でもないと交流の機会が無かったと思います。国際学会に参加して、研究分野も価値観も視野が広がりました。
 博士課程1年というまだまだ未熟な段階で、このような大きな国際学会に参加した経験は非常に貴重で代えがたいものであると感じています。自分と同じくPhD取得のために研究を進める学生、PhDを取りたてでポスドク先を探す研究者やラボを持ったばかりの若いPIなど、様々な年齢層、キャリア層の人から話を聞くこと、アドバイスをいただくことができました。数年後には、自分にはどういう選択肢が存在し、どのようになりたいのか、具体的な研究者像がより明確になったように思います。この感動と情熱を糧に、これからも研究に邁進していきたいと思います。最後に、このような機会をくださった故岡田節人先生ならびに日本発生生物学会、関係者の皆様に感謝いたします。本当にありがとうございました。
2022.12.08

岡田節人基金 ISDB海外派遣報告書 浅倉祥文(理研BDR)

理化学研究所生命機能科学研究センター
浅倉祥文(博士研究員)
日本発生生物学会岡田節人基金若手研究者海外派遣助成をいただき、2022年10月16日から20日にポルトガル南部Algarve地方のSalgadosという町で開催された、19th International Congress of Developmental Biologyに参加しました。
 コロナウイルスCOVID-19感染症の世界的流行の影響が残る中での海外学会参加でしたので、その点についても経験したことを記載いたします。今後海外へ渡航される方の参考になれば幸いです。

【19th International Congress of Developmental Biologyについて】
 この会議は4年に一度開催されており本来は2021年に予定されていましたが、COVID-19感染症の影響のため1年延期となり、5年ぶりに開催された会議でした。会期中は午前中と夕方に口頭発表があり、昼食の時間を含めて三時間ほどがポスター発表というスケジュールでした。
 口頭発表は半分ほどが招待講演者の有名な先生方による発表で、あとの半分ほどは応募者から選ばれた方による発表でした。私は今回ポスターのみで応募したのですが、一体どのような方が口頭発表に選ばれるのか、次回以降に口頭発表に選ばれるにはどの程度の実績や研究内容が必要なのか、という点にも興味を持っていました。すると選ばれた方は若い方が多かったものの、研究室を主宰する立場にあり有名な学術誌に論文を発表したばかりの先生がほとんどでした。また招待講演者の先生方のお話は数十年の研究の積み重ねの上で新たな知見を議論しており、興味深い発表ばかりでした。こうした研究者になれるよう努力しよう、と思いを新たにしましたが、まだ道は長いようです。
 また会期全体を通じて、研究手法としてオルガノイドや数理・物理的な手法を用いた研究が多数発表されていたことが印象的で、新しい技術や新しい着眼点に基づく最先端の研究発表を多数聞くことができました。発表を聞きながら私の頭に浮かんだ疑問は多くが発表の中でデータと共に答えが与えられていたのですが、質疑応答の時間には、言われてみれば「なるほど」と思うような鋭い質問が多くなされ、対する発表者の方の答えもスマートで、短い時間の中で非常に内容の濃い議論が交わされていました。
 今回私は「Chromatin dynamics during collinear Hox gene expression」というタイトルでポスター発表を行いました。会期中、およそ400名がポスター発表を行っており、ポスター発表の会場は室温が上がるほどの熱気に包まれていました。そのため聞きたいポスターを探すのも、見つけて近くまで移動するのも一苦労という状態ではあったのですが、幸いにも発表時間の間ずっと、興味を持ってくださった方と議論することができました。ただ最も熱心に話を聞いてくださり様々な質問や提案をくださった方が、異なる発生ステージでほぼ同じ実験を予定してグラントをとったばかりだと去り際に教えてくださり、実は競争相手を見つけたので進捗状況に探りを入れる目的もあったのでは、と焦る場面もありました。しかしこうした議論の中で、研究成果の論文化までに必要な要素やさらなる発展の可能性が具体的に見えてきた点が大きな収穫でした。

【COVID-19感染症流行下での海外渡航について】
 2019年の年末ごろから本来の開催予定だった2021年にかけてはCOVID-19の影響から多くの学会が中止や延期となり、開催されてもオンライン会議が主という時期でした。しかし今回はポルトガルの会場で現地開催の会議に参加することができました。
 会議の開催された2022年の10月は、国内ではまだマスクを外して外出する人はほぼおらず、感染対策が国レベルで徹底されていましたが、経済活動とのバランスが議論されはじめた時期でした。例えば9月までは、日本入国の飛行機への搭乗前72時間以内のPCR検査で陰性を証明する必要があったのですが、この検査はワクチン接種回数が3回に満たない者のみと変更され、ワクチン接種が3回以上の者は入国前の検査が不要となりました。そのためニュースでは来日する観光客も増え始めていると言っていましたが、日本国内の空港では人はまばら、という状況でした。
 対してポルトガルや途中の飛行機の乗り継ぎで立ち寄った国では、空港は真っ直ぐ歩けないほどの人で混雑しており、飛行機内や電車中でもマスクをしている人は0.1%もいませんでした。その割には咳やくしゃみをしている人が多く居ましたが。また、利用した航空会社からは「日本出国前72時間以内のCOVID-19陰性証明を携行」するよう案内があったものの、携行していた陰性証明の提示を現地で求められることはなく、流行は終わったものとして扱われている印象でした。
 こういった状況下での学会参加でしたので、学会会場で会った日本人の方は皆さん3回のワクチン接種を済ませたと仰っていました。しかし私は2回目接種日から開けるべき日数のため3回目接種が間に合わず、帰国前の72時間以内の検査で陰性証明をする必要がありました。そのため万一のCOVID-19感染もカバーする海外旅行保険を契約し、さらにほとんどの航空会社で機内持ち込みが許可されているウェットティッシュ型の消毒用アルコールや大量のマスクを日本から持参し、感染しないよう注意しながらの学会参加となりました。会場では食事中にも議論が交わされている中、感染の可能性が気になって食事中は話をするのを躊躇ってしまい、今回の学会参加で心残りな点となってしまいました。
 また帰国用の検査のため、日本の指定の書式で結果を発行してくれる検査場を探したところ、ヨーロッパでは既に検査が必要な場面がほぼ無いためか、学会会場から50km離れた街まで行かないと検査が受けられませんでした。今回私は幸いにも、なんとか辿り着いた検査場で陰性証明が得られたのですが、今後の海外ではCOVID-19の検査が可能な場所を探すのも難しくなると思いますので、その点も下調べが重要だと思います。
 今後は日本でもCOVID-19の影響は緩和していくと期待したいですが、それまではワクチンを何度も打ち、マスクや手洗い、アルコール消毒などの感染対策を続けるのが得策なのだろうと思います。

【謝辞】
 最後に、今回の学会参加を後押ししてくださった所属研究室の森下先生と共同研究者の鈴木先生、そして日本発生生物学会関係者の皆様と故岡田節人先生に深く感謝いたします。貴重な経験を積ませて下さり、ありがとうございました。