2025.05.26

第1回Evo-Devo若手研究会 参加報告書 吉田智稀(大阪大学)

大阪大学
吉田智稀
この度、第1回Evo-devo若手研究会に参加させていただきました。
私は現在、発生の研究室に所属していますが、研究テーマが進化と関連していることもあり、進化にも興味を持っていました。そのため、本研究会は自分の研究を発生だけでなく進化の視点からも考える良い機会になると思い、参加を楽しみにしていました。
本研究会は2日間にわたって開催されました。1日目はポスター発表を行い、多様な研究テーマを持つ方々と交流することができました。特に興味深かったのは、進化を理解するために特徴的な生物を対象とし、その特性を活かした研究が数多く行われていたことです。生き物が好きな私にとって、非常に刺激的な時間でした。また、異なるバックグラウンドを持つ研究者の方々から、自分の研究に対して多角的な視点から貴重なアドバイスをいただくことができました。
2日目はワークショップが行われ、集団遺伝学と進化発生学の関連について議論する機会を得ました。特に印象に残ったのは、遺伝型と表現型の関係についての議論です。遺伝型と表現型は一対一で対応するわけではなく、集団遺伝学の現象を理解するには発生システムの解明が重要である、という考え方に大きな関心を持ちました。私自身の研究でも、遺伝型だけでは説明しきれない現象があり、このワークショップで得た知見が今後の研究のヒントになるのではないかと感じています。
この2日間を通して、自分の視野を広げ、研究への理解を深めることができたと実感しています。
最後になりましたが、本研究会を企画・運営してくださった皆様、また旅費を支援してくださった発生生物学会に心より感謝申し上げます。
2025.05.26

第1回Evo-Devo若手研究会 参加報告書 権昇俊(クォン・スンジュン)(九州大学)

九州大学
権昇俊(クォン・スンジュン)
私は大学院にきてからずっと進化発生生物学(Evo-Devo)の研究をしているが、まだEvo-Devo専門の研究会や学会に参加したことはなかった。発生学会には毎年参加し、同じく「進化」のカテゴリーで発表する研究者たちと交流したことはあったが、進化発生について長く・深くディスカッションしたことはなかったので、今回はとても楽しくて新鮮な経験をすることができた。
第1回Evo-Devo若手研究会で特に面白かったのは、ワールドポスター発表だった。全員がA3サイズのポスターを作成し、質疑応答を含めて10分間お互いの研究をシェアする形式だったが、気軽にさまざまな進化発生研究を聞いて議論することができて、あっという間に5時間が経つほどとても楽しかった。特に、自分の研究と深く関わった研究をされているが今まで知らなかった研究者と交流したり、全く知らなかった生き物やその特徴について学ぶことができて非常に有意義な時間だった。
2日目のワークショップ「次の10年でEvo-Devoは何を明らかにすべきか」では、それぞれ興味のあるテーマについて4時間ほどディスカッションし、それをまとめて共有した。面白そうなテーマがたくさんあった中、私が選んだテーマは「新技術・新視点を取り込むことはEvo-Devoに何をもたらすか?」だった。各自の研究の話など、途中で寄り道をすることもあったが、6人が全員活発に討論に参加していろいろな最先端技術や、代謝(エネルギー)などEvo-Devo研究で比較的注目されていない視点について話した。また、ドラえもんやSF的に、仮にどんな技術でも開発できるとすれば、どういった技術があったら、それぞれの研究のどういう問題が解決できるかという話も盛り上がり、たとえば非モデル動物(エミューなど)の産卵の数・頻度を増やすためにはどういう技術が必要かについても議論した。
学部生からシニア研究者まで、また、私みたいな留学生や、海外で研究されている方々も集まって、2日間Evo-Devoを満喫する楽しい研究会だったと感じる。コミュニティーとしてはある程度ゆるい統合となっていて、進化や発生について詳しくないという人も興味があれば参加可能だったので、プレッシャーを感じることなく、気軽に討論に参加することができた。

このような有意義で楽しい研究会を開催し、また支援してくださった日本発生生物学会の関係者の皆様に深く感謝申し上げます。
2025.05.26

第1回Evo-Devo若手研究会 参加報告書 待井長敏(東京科学大学)

東京科学大学
待井長敏
2025年3月11-12日に開催されました第1回Evo-Devo若手研究会への参加におきまして、日本発生生物学会から旅費支援を補助いただきました。
開催地は岡崎にある基礎生物学研究所のホールで、学部生からシニアの先生方を交え1泊2日の活発な議論が行われました。倉谷滋先生、佐藤矩行先生、吉田善哉 博士をはじめとする皆様の講演のもと、これまでのEvo-Devoの歴史やその中で生み出されてきた哲学的概念、実際の研究内容や研究者の実践、様々な分野が交差する中でどのようにして新しい知見を統合的に生み出していくかなど、普段の研究生活では考えないような俯瞰的な視点を持って自分の研究について改めて考えることができました。
現在私の取り組んでいる研究は、参加者の大半を占めていた発生生物学や比較形態学をバックグラウンドとするのもではなく、いわゆる集団遺伝学的な興味が強いものでした。そのため参加前は今まで関わりが薄かった人々とどのように関わり得るのか、そしてそこから本当に新しい視点を得ることができるのかなど、懐疑的でありました。しかしながら、ワールドカフェ形式のポスター発表や、一日を通しての広く深いテーマでの議論など運営の人たちの工夫もあり、とても楽しく、また有意義な時間にすることができました。この場を借りて運営の皆様にも御礼申し上げます。
最後になりますが、日本発生生物学会様による支援によりこの様な貴重な経験をすることができました。心より感謝申し上げます。
2025.05.26

第1回Evo-Devo若手研究会 参加報告書 千代田創真(東京大学)

東京大学
千代田創真
この度は日本発生生物学会よりご支援をいただき、3月11日・12日の二日間にわたり開催された第1回Evo-Devo若手研究会に参加しました。

Evo-Devoという分野に特化した交流の機会は非常に貴重で、これまで同年代の学生の発表を時間をかけて聞く機会はあまりありませんでした。特に、私はコロナ禍に研究室に配属されたこともあり、研究室のメンバー以外と直接交流する機会が少なかったため、同じ分野を研究する学生と交流し、自身の研究へのモチベーションを上げる良い機会になるのではと考えて今回の研究会への参加を決意しました。

参加前には、先生方の講演題目の中に「エヴォデヴォの終焉」や「難題」などのワードを見つけ、どのような厳しい議論が展開されるのか不安と興味が入り混じった気持ちで臨みました。しかし実際に参加してみると、これまでのEvo-Devoの歴史の中で、現在の研究領域が確立されてきた背景や現在の課題について深く学ぶことができ、自分の研究がこの分野の中でどのような意義を持つのかを改めて考えるきっかけとなりました。
ポスター発表やワークショップでは、通常の学会よりも長い時間をかけて研究の背景や技術的な課題について詳しく議論することができました。様々な研究背景をもつ方々と交流する中で、普段の研究では得られない視点やアドバイスをいただき、今後の研究の進め方について新たな方向性を見出すことができたと感じています。同年代の研究者との交流を通じて、実験の悩みや課題を共有しながら、互いに刺激を与え合うことができたのも大きな収穫でした。

本研究会の開催にご尽力いただいた実行委員会の皆様、日本発生生物学会の関係者の皆様に深く感謝申し上げます。
2025.05.26

第1回Evo-Devo若手研究会 参加報告書 眞貝碧(東京科学大学)

東京科学大学
眞貝碧
この度は日本発生生物学会よりご支援をいただき、3月11日・12日の二日間にわたり開催された第1回Evo-Devo若手研究会に参加しました。

Evo-Devoという分野に特化した交流の機会は非常に貴重で、これまで同年代の学生の発表を時間をかけて聞く機会はあまりありませんでした。特に、私はコロナ禍に研究室に配属されたこともあり、研究室のメンバー以外と直接交流する機会が少なかったため、同じ分野を研究する学生と交流し、自身の研究へのモチベーションを上げる良い機会になるのではと考えて今回の研究会への参加を決意しました。

参加前には、先生方の講演題目の中に「エヴォデヴォの終焉」や「難題」などのワードを見つけ、どのような厳しい議論が展開されるのか不安と興味が入り混じった気持ちで臨みました。しかし実際に参加してみると、これまでのEvo-Devoの歴史の中で、現在の研究領域が確立されてきた背景や現在の課題について深く学ぶことができ、自分の研究がこの分野の中でどのような意義を持つのかを改めて考えるきっかけとなりました。
ポスター発表やワークショップでは、通常の学会よりも長い時間をかけて研究の背景や技術的な課題について詳しく議論することができました。様々な研究背景をもつ方々と交流する中で、普段の研究では得られない視点やアドバイスをいただき、今後の研究の進め方について新たな方向性を見出すことができたと感じています。同年代の研究者との交流を通じて、実験の悩みや課題を共有しながら、互いに刺激を与え合うことができたのも大きな収穫でした。

本研究会の開催にご尽力いただいた実行委員会の皆様、日本発生生物学会の関係者の皆様に深く感謝申し上げます。
2025.05.26

第1回Evo-Devo若手研究会 参加報告書 平尾咲(大阪大学)

大阪大学
平尾咲
この度は、旅費支援にご採択いただき誠にありがとうございました。3月11,12日に愛知県岡崎コンファレンスセンターで開催されました「第1回Evo-Devo若手研究会」に参加させていただきました。

私は普段発生について研究をしていて、進化について興味はあるものの初心者で、新しい概念をたくさん学ぶことができました。
特に私はポスター発表が印象に残りました。今回のポスター発表がワールドポスター形式という形式で、6人くらいでグループを作って順番に発表をしていくというものでした。学会などでよく見るポスター発表では、どうしてもタイトルを見て自分の興味のある、自分と似た分野のポスターを見がちだったのですが、今回の形式では事前に班を決めてくださっているので、普段の自分であればスルーしてしまいそうな面白い研究の話を聞くことができました。さらに、普段いる分野からはあまり飛んでこない角度からの質問も多く、自分の研究に対しても多角的に考えるいい機会になりました。

ワークショップでも、考えたことのないような進化の話を聞いて、自分なりに処理しようといろいろ考えることができたのがとても楽しかったです。次回開催があれば、もっと進化に対する理解を深めてから参加して、より深い議論ができるようになりたいです。

今回このような機会を開催し運営してくださった皆様に感謝申し上げます。
2025.05.26

第1回Evo-Devo若手研究会 参加報告書 岩重日奈子(東京科学大学)

東京科学大学生命理工学院
岩重日奈子
2025 年3月11日・12日に開催された「第1回 Evo-Devo 若手研究会」に参加させていただきました。これまでいくつかの学会年会には参加したことがありましたが、研究会に参加するのは今回が初めてでした。私はもともと発生学に興味を持ち、研究室に所属して研究を始めましたが、研究を進めるうちに進化にも関心を抱くようになり、発生と進化の両面から知識を深めたいと考えるようになりました。そこで、同じ分野の学生や若手研究者の方々と密に交流できる機会を求め、本研究会への参加を決めました。

本研究会は2日間にわたり開催され、初日は講演と「World Café」が行われました。World Caféでは、自身の研究をA3サイズのポスターにまとめ、カジュアルな雰囲気の中で議論を交わしました。これまで、自分の研究に近い分野の方々と話す機会が中心でしたが、本研究会では全く異なる生物種を研究対象とする学生の方々と交流することができ、大変有意義な時間となりました。

2日目には、講演とワークショップが行われました。ワークショップでは「次の10年で Evo-Devo は何を明らかにするべきか」というテーマのもと、複数の班に分かれて議論を行いました。私の班では、「形質の新奇性と発生拘束の関係」について議論し、まず各自が考える形質の新奇性について具体例を挙げた後、発生拘束の観点を交えながら話し合いました。自身の研究について議論する機会は研究室内でもありましたが、今回のように広い視点での議論を行う機会は少なかったため、非常に刺激的な経験となりました。

今回の研究会を通じて、学生や若手研究者とのつながりを築くだけでなく、自身の研究に対する新たな課題や発展の可能性について考えるきっかけを得ることができました。本研究会を企画・運営してくださった皆様、また、ご支援くださった関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
2025.05.26

第1回Evo-Devo若手研究会 参加報告書 古本知奈美(神戸大学)

神戸大学
古本知奈美
私は、昆虫の形態が多様化した要因に迫る研究がしたいと考えています。昆虫の形態の進化要因について、その機能や系統的要因、適応的要因が明らかにされてきた研究は多くみられます。一方で、至近的要因を明らかにした研究は少なく、進化過程を考察するためには、昆虫の形態に関与する形態形成過程や遺伝的基盤の解明をすることが急務だと考えています。
そこで、修士学生から進化発生学を勉強し始めました。2025年の2月に修士論文を提出するまでの過程で感じたのは、日本には進化発生学を重要視している研究が少ないのではないかということでした。私の所感ですが、細胞動態や分子レベルの発生過程の記載が足らないまま、形態に関わる適応的要因と遺伝的基盤だけが明らかにされつつある研究が多くみられると感じています。もちろん研究は日進月歩なので、解明できるところから漸次的に解決していくことが重要だと思いますが、広く発生過程を解明し、種間比較するような研究が増えると、より深い議論ができると考えています。そのような現状において、進化発生学に着目し、遺伝子から分子、発生、系統まで多くの分野の若手研究者が参加するような本集会は、とても魅力的に感じます。
私は体調不良で1日目しか参加できなかったのですが、本研究会の良い点は2つあると考えています。1つ目は、若手研究者の人脈が広がった点です。本研究会は、学部生からポスドク、研究者の方まで多くの年齢層の方が参加されていました。その中でも、自分の年齢と近い方と議論する機会が多かったことがとてもありがたかったです。1日目のポスター発表やコーヒーブレイクでは、距離が近い中で複数人と研究についてディスカッションすることで、自分の研究の立ち位置や、発生学の視点から見た研究の欠点を指摘して頂き、とても勉強になりました。そのような距離感でお話しできたからか、研究会が終わっても連絡を取り合う同年代の友人ができたことがとても嬉しかったです。今後も同年代の研究に関わる方々と切磋琢磨しようと思える良い機会でした。2つ目は、進化発生学について今一度よく考える機会を得たことです。研究というのは、基本的に一人で計画し、実験し、結果をまとめるため、視野が狭くなりがちだと考えています。しかし、多くの研究に携わる人と話すと、研究のモチベーションから、自分の分野の認識まで、思っているよりも大きな違いがあると感じます。私は、次世代シーケンサーなどの技術革新を経て、遺伝子発現解析が重要だと考えている方が多いのだと考えていました。しかし、slackでの議論を読んでいると、「発生システムはどのように進化してきたか」のチャンネルでは、発生過程の中でも細胞動態に注目したいという意見が出たようで、とても共感しました。また、他チャンネルの新奇形質の定義についても、適応的意義や形態の機能における類似性にまで議論が及んでおり、多くの分野の研究者が集まって議論することで、分野の重要な単語の定義を再検討することの重要性を感じました。このような問いは、専門的な研究を突き詰めるほど盲点になる部分だと感じているので、研究会のslackでの議論が落ち着いてからも、継続的に考える必要性を強く感じました。
研究者の交流会として、また、学問の再検討をする機会としても、またこのような会があれば参加させて頂きたいです。とても良い会を開いて頂き、ありがとうございました。
2025.03.31

岡田節人基金 海外派遣報告書 宇佐美優奈(埼玉県立大学)

埼玉県立大学大学院 保健医療福祉学研究科
宇佐美優奈
この度,岡田節人基金海外派遣助成をいただき,アメリカ アリゾナ州フェニックスで開催されたOrthopaedic Research Society (ORS)が主催するORS2025 Annual Meeting(米国整形外科研究会議 年次総会 2025 )に参加しました.
本学会は,臨床の整形外科医師や理学療法士などの医療従事者と,筋骨格系の基礎研究分野の エンジニア,分子生物学の研究者が一同に会する領域横断的な学会です.北米で開催される整形外科分野における基礎研究を扱う学会としては最大規模で,参加者は3,000人超に上ります.会期は5日間にわたり,ポスター並びに口述発表が行われました.参加者の研究対象は筋,腱,軟骨,骨といった筋骨格系が中心であり,患者データを用いた臨床病態研究や,マウスやゼブラフィッシュを用いた基礎研究まで多岐に渡ります.
 私自身,学部3年生の時に初めて国際学会に参加したのが本学会であり,個人的に非常に思い入れの強い学会です.修士課程1年目の頃から毎年ポスター発表を行なってきましたが,今年度は初めての口述発表となりました.参加前はこれまで参加してきた学会で最も緊張しておりました.しかし,いざ学会が始まると,修士課程で留学した際にお世話になった研究者や,これまで参加してきた国際学会で仲良くなった同世代の研究者との再会で会話も弾み,毎日が非常に楽しい時間となりました.今回の私の発表は,マウスモデルを用いた腱発達過程におけるメカノバイオロジー機構の関与に関する研究内容でした.私自身の研究に強く関わる腱発生のキーとなる転写因子を同定した研究者や,胎児期の筋腱分化プロセスを明らかにした研究グループも本学会を主戦場としています.今年も実際にお会いし,私が行なった発表について直接ご意見を伺えたことは,今後研究を継続していく上で非常に有意義であったと感じております.実験は思うように進まないことも多く,研究室に籠りながら継続する中でようやくまとまりつつある成果に対し,普段論文でよく目にする著名な研究者の方から“Existing !”や“Amazing!”というような欧米のカルチャーらしい言葉をかけていただけたことは,お世辞とはいえ何より嬉しいものでした.
今回自身が発表した Tendon Mechanobiology のセッションにおいては,in vivoのみならず,in vitro, ex vivoの最新技術を用いた研究成果も発表されておりました.現在の私の研究では,in vivoデータをメインで構成しており,今後の向けin vivoでは検証しきれない点について細胞培養の実験系も検討していたタイミングであったため,生体外培養の実験をすでに進めている研究者から最新の知見を直接聞けたことは,次のステップへのヒントとなりました.発表後,運よくそのグループのPIに声をかけることができ,今後の共同研究に向けたコミュニケーションをとることができました.

結びになりますが,今回の発表に際し,渡航をご支援いただきました日本発生生物学会関係者の皆様に深く感謝申し上げます.
2025.03.31

岡田節人基金 海外派遣報告書 池田貴史(京都産業大学)

京都産業大学タンパク質動態研究所
池田貴史
“Embryology heaven”訪遊記

“This is the embryology heaven.” Eddy de Robertisが閉会のあいさつで述べた一言が、帰国してしばらく経った今でも耳に響く。たしかに、このシンポジウムは発生学者にとっての楽園そのものだった。
 今回私が参加したのは、2024年9月16日から19日の4日間にわたってドイツ・フライブルクで開かれたFreiburg Spemann-Mangold Centennial Symposium。2024年はフライブルク大学のHans SpemannとHilde MangoldによるSpemann-Mangoldオーガナイザーの発見から100周年という記念すべき年であり、それを祝うための特別シンポジウムである。学部生時代の実習で平良眞規先生のご指導を得てアフリカツメガエル胚を用いたオーガナイザー移植を体験し、発生学にはまるきっかけをもった私としては一も二もなくという感じで参加を申し込んだ。最近では発生学への入り口がオーガナイザーという方は少数派かもしれないが、苦労して精密な手作業を習得し、刻々と変わってゆくオーガナイザーの活性(そのせいで美しい二次軸を誘導するのはなかなかむずかしい)を目の当たりにしたことは、いまなお鮮やかな記憶として脳裏に刻まれている。
日本から14時間のフライトでフランクフルトに降り立ち、そこからさらに2時間半の特急に乗ってたどりついたフライブルクは、ドイツ南西に広がる黒い森(シュヴァルツヴァルト)のそばに位置する大学都市である。市街地の規模は小さく、街はずれのシュロスベルク(フライブルク城跡)にのぼると全体が見渡せてしまう(図1)。旧市街の中心には16世紀に完成したフライブルク大聖堂がそびえ、その周りには果物や野菜を売る露店が並ぶのどかさである。今回のシンポジウム会場となったフライブルク大学の大講堂は、ちょうどSpemannが当地に赴任した頃に建設されたといい、たしかな風格を感じさせる建物であった。
シンポジウムの形式は、世界中から招かれた40人のPIが30分ずつ自由に話すというもので、オーガナイザー因子探索と変異体スクリーニングの華やかなりし1990年代から活躍してきた研究者たちが一堂に会し、思い出話をまじえつつオーガナイザーの研究史から現在進行中の研究、さらには今後の発生学が向かうべき方向性にいたるまで多種多様な話題を提供するという豪華なシンポジウムであった。普段の学会でいうPlenary lectureを一度にまとめて40回聞いた感覚である。未発表データも多く含まれていたので個々の内容に踏み込んで書けないのが残念であるが、オーガナイザーの研究史に関する発表内容はCells & Developmentの特集号(Spemann and Mangold centennial special issue. Part I: historical perspective)として公表されているので、関心のある方には一読をお勧めしたい。特に興味深かったのはSpemannがどのようにしてオーガナイザーという概念を着想したかについてのThomas Holsteinの考察で、どうやらSpemannは、ヒドラにおいて類似の実験がEthel Browneにより行われていたことを知っていたという(Holstein, Cells Dev., 2024)。オーガナイザーはMangoldの神技的な移植実験に基づいてSpemannが忽然と持ち出してきた概念であるかのような印象を持っていたが、彼らといえども巨人の肩の上に立って考えていたことを少しの安堵をもって聞いた。
そのほか、いろいろな人が繰り返し語っていたのが、どれだけ多くの概念が原口背唇部の移植というシンプルな実験から着想され(誘導、神経発生、自己組織化…)、それがどれだけ発生のメカニズム解明につながったか、ということで、確かにこれはいくら強調しても強調しすぎることはない点だろう。彼らの時代、発生学研究に用いることができる手法は観察と移植くらいしかなかったわけだが、それに対して現代はあまりにも多くの実験が可能である。今回のシンポジウムでも、細胞移植や胚操作といった古典的手法に誇りをもってこだわる人がいる一方で、オミクス的手法を全面的に採用し、物量作戦で突き進んでいる人も多かった。この100年の間に実験手法の選択肢は大きく広がったが、さて、それらをどのように使えば、移植という一つの手法だけで達成されたオーガナイザーの発見と同じくらいのインパクトをもつ研究ができるのか?と深く考えさせられた。
そのことはさておくとして、本シンポジウムを通じて何より印象的だったのは、たぶんこの人たちは本当に発生学(というか、発生現象そのもの)が大好きで、いままでずっと楽しみながら研究をしてきたのだろうな、ということがじかに伝わってくる発表が多かったことである。発表のスタイルも多種多様で、手描きのスライドで自身のノーベル賞研究を淡々と紹介し、質問を受けずに悠然と壇を降りたChristiane Nüsslein-Volhard、クロマチンが開いてHox遺伝子の転写が順番に始まるさまを洋服のボタンを外す動作にたとえ、一着のコートだけが映ったスライドで何分間もしゃべり続けたDenis Duboule、初期発生研究のオピニオンリーダーとして、今後の発生学が向かうべき方向性を圧倒的な説得力をもって示したAlexander Schierなど、論文を読むだけではわからない大学者(巨匠)たちの強烈な個性を目の当たりにすることができた。
とはいえ巨匠の芸に酔うばかりでは満足できないのが駆け出し研究者の性で、2日目の夜には、以前から進めてきた「左右軸形成におけるNodalシグナルの作用機序」についての研究に関するフラッシュトークとポスター発表に挑んだ。100枚近いポスターが極めて狭い会場に立ちならぶなか、2時間半にわたって多くの方々に発表を聴いて頂けた。ビールやワインを手に、時間を忘れていろいろな国の研究者たちと議論する、国際学会ならではの雰囲気を存分に楽しむことができたと思う。また、翌朝早くにポスター会場をのぞいたところ、Alexander Schierがわたしのポスターの前で立ち止まっていたので、ひとしきり研究内容を聞いてもらえたのは幸運であった。有名な研究者ほどいろいろなポスターで声がかかって自分のポスターになかなか呼び込めないものだが、彼らに話を聞いてもらうチャンスをつかむためには、発表時間外でも会場に張り込んでおくことが重要と実感した。
 こうした極めて充実したプログラムの合間に、Spemannゆかりの地や博物館をめぐるツアーや、現地で知り合った若手研究者たちと居酒屋を訪れたり、招待講演者として参加されていた浅島先生、上野先生、武田先生のお三方を囲んで飲み会が開かれたりといろいろなお楽しみもあった(図2)。また、閉会後に武田先生とともにCentre for Organismal Studies (COS) Heidelbergを訪れ、メダカ胚発生の研究で著名なJochen Wittbrodtの研究室でセミナーをさせて頂けたのも貴重な経験であった。

最後に、本シンポジウムへの参加には、学会からのTravel award grantに加えて岡田節人基金からのご支援を頂いた。歴史的円安に研究費不足と、なにかにつけて悩みの多い浮き世をしばらく離れて天国に遊ぶことができたのは、ひとえに故岡田節人博士と日本発生生物学会の関係者の皆様のおかげと深く感謝申し上げる。
図1:シュロスベルクから望むフライブルク市街。中央右に立つ尖塔がフライブルク大聖堂。
図2:フライブルク大学博物館でSpemannとMangoldの特別展を見学。