2025.12.24
日独合同ミーティング2025 参加報告書 寺西亜生(金沢大学)
金沢大学
寺西亜生
寺西亜生
この度、9月24日から27日にかけてドイツで開催された日独合同若手ミーティングに参加させていただきました。初日にハイデルベルクでのワークショップに参加し、続いてギュンツブルグで行われたGfE School 2025に参加しました。私にとってヨーロッパでの学会参加は初めてで、見るもの、聞くもの、体験するもの全てが刺激的で忘れられない経験となりました。ミーティングの様子と、現地の先生や学生たちとの交流を通じて感じたことを書きたいと思います。
初日は、ハイデルベルク大学のCentre for Organismal Study (COS)で開催されたワークショップでした。乗り継ぎを含めて計18時間ほどのフライトの後、ミュンヘンに到着し、そこからさらにハイデルベルクの会場まで高速鉄道で5時間というタフなスケジュールでした。長時間の移動と時差ボケ、そして想像以上のドイツの秋の寒さに、会場に着く頃にはすっかり疲れ果て、眠気に襲われていました。しかし、会の始まりから目の覚める出来事がありました。開会の挨拶が終わった瞬間、ドイツ側の参加者たちが一斉に拳で机を「ゴンゴン」と叩き始めたのです。聞けば、拍手の代わりに机を叩くドイツの文化だそうです。その音を聞いて、外国で学会に参加しているという実感が沸き上がり、身が引き締まりました。発表ではオルガノイドからDNAバーコーディングによる系譜解析まで、発生生物学における幅広い手法を学ぶことができました。発表後には、研究施設の見学ツアーがあり、特に印象に残ったのはメダカの飼育施設です。COSではメダカ研究が盛んで、巨大な施設に多数のメダカたちが飼育されていました。魚の自動給餌器なるものを初めて目にして驚きましたが、それ以上に心に残ったのは、泳いでいるメダカを指さしながら愛おしそうに語っている先生の姿でした。研究への熱い情熱に引き込まれ、私たちも楽しくお話を伺うことができました。
翌日からは、GfE Schoolに参加するため、ハイデルベルクから車で3時間ほどの所にあるギュンツブルグという小さな町へ移動しました。会場となったのはSchloss Reisensburgという町はずれの丘に佇む石造りの古城です。塔の上からは付近をゆったりと流れるドナウ川を眺めることができました。ミーティングの参加者が40人程度と小規模だったこともあり、落ち着いた雰囲気の中で和やかな3日間を過ごすことができました。
ミーティングのテーマは"Lineages: Revealing How Cells Make Embryos and Tissues"。脳や四肢の発生とその細胞系譜、発生過程における上皮のメカニクスと進化、発生胚に対する深層学習を用いた画像解析手法など、多岐にわたる興味深い研究が紹介されました。全体を通して興味深かったのは演題の約4分の1が植物に関する研究だったことです。普段参加する学会では植物の研究に触れる機会が少ないため、新鮮な思いでした。もう一点印象的だったのは、各セッションの座長を学生が務めていたことです。特に質疑応答を堂々とさばく姿からは彼らの高い主体性を感じることができました。私は2日目に、上皮組織の力学特性とその制御メカニズムをテーマに口頭発表を行いました。ありがたいことに多くの方に関心を持っていただき、発表後のコーヒーブレイクでは、実験系の詳細な部分や具体的なメカニズムについて、もう一歩踏み込んだ有意義な議論を行うことができました。口頭発表の後にはポスターセッションがあり、ドイツビールを片手に活発な議論が行われました。驚いたのは、学生たちが自身の専門外のテーマに対しても、実に的確で内容の濃い議論を行っていたことです。彼らの知識の広さとディスカッション力の高さに圧倒されました。
会期中は毎食、全員が小さな食堂に集まります。テーブルを囲んで話すうちに、学生や先生方とも自然と打ち解けることができました。様々な出身や研究背景を持つ彼らの話を聞くうちに、世界各国から自らの研究への興味を追求してドイツに集まっている人が多いことを知り、ドイツの研究環境が持つ多様性を実感しました。また、学生と先生が話す様子は、驚くほど対等でした。英語という言語がそうさせているのかもしれませんが、先生と生徒という関係ではなく、両者は研究という分野に身を置く同士なのだという雰囲気を強く感じました。このような環境が、彼らの高いディスカッション力を育んでいるのだと納得しました。
海外の学会での初めての口頭発表を通して、自らの研究発表や英語がある程度通用したことは大きな自信になりました。その一方で、現地の学生を目の当たりにし、英語での会話能力やディスカッション能力など、自分に足りない部分も痛感させられました。この貴重な経験を糧に、今後の研究活動にさらに邁進していきたいと思います。
最後になりましたが、会の運営から現地の移動や食事のお心遣いに至るまで奥村先生、鈴木先生、Thomas先生には大変お世話になりました。心より御礼申し上げます。また、このような素晴らしい機会と助成を賜りました日本発生生物学会の関係者の皆様に、深く感謝を申し上げます。ありがとうございました。
初日は、ハイデルベルク大学のCentre for Organismal Study (COS)で開催されたワークショップでした。乗り継ぎを含めて計18時間ほどのフライトの後、ミュンヘンに到着し、そこからさらにハイデルベルクの会場まで高速鉄道で5時間というタフなスケジュールでした。長時間の移動と時差ボケ、そして想像以上のドイツの秋の寒さに、会場に着く頃にはすっかり疲れ果て、眠気に襲われていました。しかし、会の始まりから目の覚める出来事がありました。開会の挨拶が終わった瞬間、ドイツ側の参加者たちが一斉に拳で机を「ゴンゴン」と叩き始めたのです。聞けば、拍手の代わりに机を叩くドイツの文化だそうです。その音を聞いて、外国で学会に参加しているという実感が沸き上がり、身が引き締まりました。発表ではオルガノイドからDNAバーコーディングによる系譜解析まで、発生生物学における幅広い手法を学ぶことができました。発表後には、研究施設の見学ツアーがあり、特に印象に残ったのはメダカの飼育施設です。COSではメダカ研究が盛んで、巨大な施設に多数のメダカたちが飼育されていました。魚の自動給餌器なるものを初めて目にして驚きましたが、それ以上に心に残ったのは、泳いでいるメダカを指さしながら愛おしそうに語っている先生の姿でした。研究への熱い情熱に引き込まれ、私たちも楽しくお話を伺うことができました。
翌日からは、GfE Schoolに参加するため、ハイデルベルクから車で3時間ほどの所にあるギュンツブルグという小さな町へ移動しました。会場となったのはSchloss Reisensburgという町はずれの丘に佇む石造りの古城です。塔の上からは付近をゆったりと流れるドナウ川を眺めることができました。ミーティングの参加者が40人程度と小規模だったこともあり、落ち着いた雰囲気の中で和やかな3日間を過ごすことができました。
ミーティングのテーマは"Lineages: Revealing How Cells Make Embryos and Tissues"。脳や四肢の発生とその細胞系譜、発生過程における上皮のメカニクスと進化、発生胚に対する深層学習を用いた画像解析手法など、多岐にわたる興味深い研究が紹介されました。全体を通して興味深かったのは演題の約4分の1が植物に関する研究だったことです。普段参加する学会では植物の研究に触れる機会が少ないため、新鮮な思いでした。もう一点印象的だったのは、各セッションの座長を学生が務めていたことです。特に質疑応答を堂々とさばく姿からは彼らの高い主体性を感じることができました。私は2日目に、上皮組織の力学特性とその制御メカニズムをテーマに口頭発表を行いました。ありがたいことに多くの方に関心を持っていただき、発表後のコーヒーブレイクでは、実験系の詳細な部分や具体的なメカニズムについて、もう一歩踏み込んだ有意義な議論を行うことができました。口頭発表の後にはポスターセッションがあり、ドイツビールを片手に活発な議論が行われました。驚いたのは、学生たちが自身の専門外のテーマに対しても、実に的確で内容の濃い議論を行っていたことです。彼らの知識の広さとディスカッション力の高さに圧倒されました。
会期中は毎食、全員が小さな食堂に集まります。テーブルを囲んで話すうちに、学生や先生方とも自然と打ち解けることができました。様々な出身や研究背景を持つ彼らの話を聞くうちに、世界各国から自らの研究への興味を追求してドイツに集まっている人が多いことを知り、ドイツの研究環境が持つ多様性を実感しました。また、学生と先生が話す様子は、驚くほど対等でした。英語という言語がそうさせているのかもしれませんが、先生と生徒という関係ではなく、両者は研究という分野に身を置く同士なのだという雰囲気を強く感じました。このような環境が、彼らの高いディスカッション力を育んでいるのだと納得しました。
海外の学会での初めての口頭発表を通して、自らの研究発表や英語がある程度通用したことは大きな自信になりました。その一方で、現地の学生を目の当たりにし、英語での会話能力やディスカッション能力など、自分に足りない部分も痛感させられました。この貴重な経験を糧に、今後の研究活動にさらに邁進していきたいと思います。
最後になりましたが、会の運営から現地の移動や食事のお心遣いに至るまで奥村先生、鈴木先生、Thomas先生には大変お世話になりました。心より御礼申し上げます。また、このような素晴らしい機会と助成を賜りました日本発生生物学会の関係者の皆様に、深く感謝を申し上げます。ありがとうございました。
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