瀧尾陽子1 Massimo Pasqualetti2 工樂樹洋1 平野茂樹3 Filippo M. Rijli2 ○倉谷 滋1
理研CDB・形態進化1,CNRS/INSERM/ULP, Strasbourg, France2,新潟大・医・保健3
一般的な脊椎動物のHoxコードは、神経分節、咽頭弓に分節的、入れ子状に発現するパターンを特徴とし、クラスター中での遺伝子の配列順序と胚の前後軸上での発現位置が相関するコリニアリティをも示す。この発現パターンは、脊椎動物頭部の位置特異的形態分化の方向を決める基盤となる。このような整然としたパターンは、系統進化の歴史の中で、いつ、どのように成立してきたものなのだろうか?これに答えるため、実験モデル動物が属する顎口類の姉妹群として、無顎類に属するカワヤツメ Lethenteron japonicumを用い、Hox遺伝子を単離、それらの系統的相同性と発現パターンを解析した。得られた11遺伝子の咽頭弓(PAs)間葉における発現を観察したところ、パラローググループ(PG)2がPA2とそれ以降、PG3がPA3とそれ以降に発現するという、顎口類と共通の特徴を一部示したものの、以降のPG遺伝子は咽頭に発現しなかった。また、以前の報告(Cohn, 2002)とは異なり、PA1に発現するHox遺伝子はなく、PG6遺伝子は神経管において予想される位置から後方に発現するだけであった。つまり、ヤツメウナギのPA1も顎口類と同様Hox-デフォルト状態によって定義されるらしく、さらにPA2も、それ以降の咽頭弓と比べ独特の遺伝子発現と形態を持つという、顎口類と基本的に変わらないパターンができあがっている。この咽頭弓の3パターンはしたがって、ヤツメウナギと顎口類の共通祖先において獲得されていたらしく、それは知られているすべての脊椎動物が3つの頭部神経堤細胞集団を持つことと整合的である。仮に祖先的脊椎動物が単調な鰓の繰り返しを持っていたとしても、それはヤツメウナギと顎口類の共通祖先をさかのぼるものでなければならない。
Page Copyright (C) 日本発生生物学会 All Rights Reserved.