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ニワトリ胚前肢芽における第2指領域決定機構の解析


天野 孝紀  井出 宏之  田村 宏治

東北大・生命


脊椎動物の四肢発生過程において指の決定に関与すると考えられる重要な領域に、肢芽後側に位置するZPAがある。指のアイデンティティーはZPAからの距離に応じて決定されていると考えられており、ニワトリ胚の前肢芽においてはZPAに近い領域にはより後側の指である第4指がつくられ、前肢芽の最も前側の指である第2指はZPAから最も離れた領域に形成される。
今回我々の行ったニワトリ胚前肢芽へのZPA移植実験において、正常胚では指をつくらない最前端の領域からは後側の指(第3指、第4指)のみが過剰に形成され、この領域に第2指の形成はみられなかった。過剰な第2指は、ZPAの作用によって拡大した本来の予定第2指領域から生じており、第2指形成の領域特異性があることが観察された。予定指領域と最前端で指を形成しない領域の違いをさらに詳しくみるため、体節の位置を目安にして肢芽を切除し、指を形成しない領域、予定第2指領域、予定第3指領域のそれぞれ3ヶ所とZPAを組み合わせた肢芽において、形成される指のアイデンティティーを調べた。その結果、指を形成しない肢芽最前端の領域には第2指を形成する能力だけが無いことが示唆された。これとは別に、予定第2指領域を肢芽の最前端に移植した場合にはその移植した指領域は指の形態的な特徴を失うことが観察された。これらの結果から、予定運命上は指をつくらない肢芽前側の組織が第2指形成に阻害的に働くことが示唆され、正常発生においてはこの肢芽最前端の領域によって第2指形成領域が限定されている可能性が考えられた。
以上の結果をふまえ、さらに第2指特異的に発現する遺伝子であるmarioを予定第2指領域の指標として用いて、微細操作胚におけるその発現領域の変化と他の前後軸マーカー遺伝子の発現変化も考慮し、第2指領域が規定される仕組みを考察する。


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