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フタホシコオロギの体節形成におけるeven-skippedの役割


小林 千春  三戸 太郎  品原 和加子  新明 洋平  宮脇 克行  更科 功  大内 淑代  野地 澄晴

徳島大・工・生物工


ショウジョウバエの体節形成過程では、pair-rule遺伝子であるeven-skipped (eve)遺伝子が2体節周期の縞模様パターンで発現する。ショウジョウバエでのeveの突然変異体では、体節が1つおきに欠損することが知られている。昆虫の発生様式には長胚型、中胚型、短胚型の3タイプに分類される。ショウジョウバエは、一度に分節化がおこる長胚型昆虫であり、コオロギは未分化な腹部を伸長させながら分節化をおこなう中胚型昆虫である。そこで、ショウジョウバエと体節形成様式の異なるコオロギにおけるeveの機能を明らかにすることを目的として、RNA interference(RNAi)法を用いたeveの機能喪失実験を行った。
RNAiの結果、顎部と胸部が1体節おきに欠損するpair-rule型の欠損を示し、腹部は体節幅の縮小や、体節の欠損が確認された。コオロギにおいてeveは顎部と胸部でpair-rule型の発現を示すことがわかっている。しかし、腹部ではpair-rule型の欠損を示さなかった。そこで腹部体節形成時におけるeveの発現パターンを詳細に解析した。コオロギ胚においてストライプの形成はpair-rule型と考えられる。eveは腹部でストライプ状に発現し、胚の後部領域で未分化な腹部が伸長するにしたがって新たにストライプ状に発現する。コオロギにおいてeveはpair-rule型の発現を繰り返すことで腹部体節形成を行っていることがわかった。しかしコオロギの腹部体節形成過程は脊椎動物に類似しており、ショウジョウバエとは異なる様式のため、腹部においてショウジョウバエのような欠損を示さないと考えられる。


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