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マウスXY生殖幹細胞の移植によるXX精巣の精子発生能の解析


立和名 剛司1  城所 知秀1  石井 万幾1  松井 利康1  的場 章悟1  金井 正美2  林 良博3  九郎丸 正道1  金井 克晃1

東大・農・獣医解剖1,杏林大・医・解剖2,東大・農・農業国際3


哺乳動物の性は、Y染色体上の精巣決定遺伝子であるSryの有無により決定され、Sryを導入したXXマウス(XX/Sry-Tg)は、精巣と雄型の内外性器を持つ雄個体へ発達する。鳥類、魚類などの哺乳動物以外の脊椎動物において、ステロイドホルモン等により性転換を誘導した雄個体では、完全な精子発生能を持つ精巣に分化するのに対し、哺乳動物において、XX/Sry-Tgマウスの精巣も含め、全てのXX雄を示す変異マウスは、生殖細胞側の異常(2コピーのX染色体の存在)により、全ての生殖細胞は消失し、不妊となる。そのため、哺乳類において、XX精巣の体細胞環境が、完全な精子発生を誘導できるかどうかは明らかとされていない。
そこで、我々は、XX/Sry-Tg雄マウス、対照群としてW/Wv雄マウス(XY)の各精細管に生後約1週齢のROSAマウスの精巣から調製したXY生殖幹細胞を移植した。移植後3ヶ月以降の各精巣で定着したROSA由来のXY生殖細胞の精子発生の動態について、組織学的、各種生殖細胞のマーカーを用いた免疫組織学的手法を用いて解析を行った。その結果、生殖幹細胞を移植したW/Wvマウス精巣では, 正常な精子発生が誘導された。しかし、XX/Sry-Tg精巣に移植した生殖幹細胞は、精母細胞までの分化は確認できたが、大部分の円型精子細胞はStep VIIに至るまでに脱落、核濃縮像が認められ、正常な伸長型精子細胞は、全く認められなかった。
以上の結果から、XX精巣の体細胞環境は、移植生殖幹細胞を精母細胞まで分化誘導することはできるが、円型精子細胞の維持、伸張型精子細胞への分化誘導が支持できないことが明らかとなった。XX精巣において、精子発生を支持できない原因がセルトリ細胞に起因するのかどうかを含め、XX精巣における精子発生異常のメカニズムについて考察したい。


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