○笹土 隆雄1 森永 千佳子1 丹羽 勝利1 四宮 愛2 安岡 顕人3 諏訪 寛1 広瀬 行洋4 依田 宏樹4 Henrich Thorsten1 出口 友則4 岩波 礼将5 渡辺 智美6 国松 早苗5 小坂田 正和7 田中 実8 近藤 寿人1,4 古谷-清木 誠1
科技団・ERATO/SORST・近藤誘導分化プロジェクト1,新潟大院・理・自然環境2,東大院・農・応生化3,阪大院・生命機能4,理研・免疫アレルギーセンター/徳島大・ゲノムセンター5,東大院・薬・生理化学6,大阪府立成人病センター7,北大院・理・生物8
脊椎動物における始原生殖細胞(PGC)の初期発生に関わる分子機構を明らかにする 為に、メダカ(Oryzias latipes)を用いてその数と分布が異常になる突然変異 体のスクリーニングを行った。ヒメダカ系統(Cab)の雄をエチルニトロソウレア(ENU) で処理して遺伝子変異を導入した後、F3世代の胚においてPGCが生殖巣の基部に集合 するst.27でPGCの数や分布に異常の見られる変異体の検出を行った。PGCの観察は、 特異的に発現するメダカvasaホモログ(olvas)のホールマウントin situハイブリダイゼーションによって行なった。450ハプロイドゲノム相当の胚 集団に対してスクリーニングを行った結果、PGCの分布に異常の見られる突然変異を1 1種、数が減少する突然変異を8種同定した。PGCの分布に異常の見られる突然変異をP GCの分布状態から4つのクラスに分類した。これらの突然変異体クラスごとのPGCの分 布から、st.27までのメダカのPGCの移動と集団化は3つのステップに分けられると予 想された。これらの突然変異体に見られる表現型は、いずれかのステップが阻害され た結果とみることができる。PGCの分布に異常の見られる突然変異体の多くのものは 体節中胚葉の減少や胴尾部の短小等の形態的な変異を併発していた。その為、PGCと 主に中胚葉組織との相互作用がPGCの移動に関わっていると考えられた。PGCの数が減 少する変異体には母性効果が見られ、PGCの決定や維持に関わる母性因子の存在が示 唆された。これらの突然変異体の解析や原因遺伝子の単離によって、生殖巣に到るま でのPGCの発生を制御する分子機構が明らかになることを期待している。
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