○網蔵 令子 小林 悟
岡崎機構・統合バイオ,科技団・CREST
ショウジョウバエの極細胞形成因子の一つとして、ミトコンドリアlarge rRNA (mtlrRNA)が知られている。MtlrRNAは、mitochondria small rRNA(mtsrRNA)、ミトコンドリアリボソームタンパク質とともに極顆粒表面でミトコンドリアタイプリボソームを形 成している。おそらく、このリボソームにより極細胞形成に必須なタンパク質をコードするmRNAが翻訳される と考えられる。そこで、ミトコンドリアタイプリボソームによって極細胞形成に必要なタンパク質が合成されるの か否かを明らかにする目的で、ミトコンドリアタイプの翻訳を選択的に阻害するChloramphenicolや Kasugamycinを卵の後極にマイクロインジェクションすることで極細胞形成が阻害ざれるか否かを調べた。極細 胞形成直前に阻害剤をマイクロインジェクションすると極細胞が形成されない胚がChloramphenicol処理で39% 、Kasugamycin処理で34%認められ、DWをマイクロインジェクションした対照胚と比較して極細胞が形成されな い胚の割合が有意に増加していることが明らかとなった。次に、極顆粒表面のポリソームを構成するリボソー ムサイズを測定し阻害剤処理胚と対照胚で比較した。対照胚では極顆粒表面のリボソームはミトコンドリアタイ プと細胞質タイプのリボソームから構成されているが、Kasugamycin処理胚では細胞質タイプのリボソームに は変化がみられないものの、ミトコンドリアタイプのリボソームは有意に減少していた。以上の結果は、極顆粒 上のミトコンドリアタイプのリボソームが関わる翻訳系により極細胞形成に必要なタンパク質が合成されている ことを強く示唆している。
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