○岩井 俊治 李 智博 吉井 敦 横田 雄洋 山下 正兼
北大・院理・生物
分裂期における染色体の正確な分離には、姉妹染色分体を結合するコヒーシンと呼ばれる蛋白 質複合体の分解が必要である。酵母では、減数分裂特異的コヒーシン蛋白質Rec8が、減数分裂に特異的な染 色体分離に寄与している。哺乳類では、減数分裂特異的コヒーシン蛋白質としてSMC1βとSTAG3が知られて いるが、Rec8についての報告はない。その他の脊椎動物でもコヒーシンに関する情報は乏しい。そこで、マウ スでRec8蛋白質、メダカでSMC1β蛋白質に着目し、減数分裂特異的コヒーシン複合体の精巣における動態を 調べた。その結果、以下のことが明らかになった。1) マウスRec8は、減数分裂を開始した生殖細胞に特異的に発現しており、他のコヒーシン蛋白質であるSMC1β やSMC3と複合体を形成するが、SMC1αとは複合体を形成しない。2) メダカSMC1βは生殖細胞特異的に発現し、体細胞分裂型コヒーシン蛋白質Rad21とは複合体を形成しない。3 ) マウスRec8は、第一減数分裂前期にはシナプトネマ構造に、中期には染色体の軸に沿って局在するが、後期 には染色体の腕部分から解離し、姉妹染色分体を結合しているセントロメアにだけ局在する。セントロメアに 局在するRec8は、第二減数分裂後期に消失する。4) メダカSMC1βは、マウスRec8と同様に第一減数分裂前期にはシナプトネマ構造に、中期には染色体の軸に 沿って局在する。以上の結果から、脊椎動物の減数分裂における染色体の結合・分離には、Rec8とSMC1βを 含む減数分裂特異的コヒーシン複合体が関与し、この複合体が段階的に染色体の腕およびセントロメアから 解離することで、第一減数分裂における相同染色体の分離と第二減数分裂における姉妹染色分体の分離が 誘起されると考えられる。
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