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マウス精巣におけるNotch3発現細胞の同定


藤曲 めぐみ  菊地 秀行  仁科 行雄

横市大・院総理・システム機能科学


哺乳類の精子形成細胞において、それらに特異的に発現しているタンパク質がいくつか同定され ている。しかしながら、幹細胞を含む未分化な精原細胞に発現しているタンパク質には、いまだ不明な点が多 い。近年、生後6日齢の精巣における精原細胞に、Notch3の発現が認められるという報告がなされた(G.DIRA MI et al, J. Andrology, 2001)。Notch3は、Notchファミリー受容体の1つであり、これらに属する遺伝子は、隣接する細胞に存在するリ ガンドと結合することにより分化を抑制し、幹細胞の細胞運命を制御している。例えばショウジョウバエにおい ては、神経幹細胞を始めとして多くの組織・器官で働く多機能遺伝子として知られている。
そこで我々は、精巣内においてNotch3を発現している細胞を明らかにするために、胎仔期から新生仔期、そし て成体に至るまでの精巣におけるNotch3の発現・局在を調べた。その結果、胎仔期においては前精原細胞に 、生後においては精原細胞のみにNotch3の発現が見られた。また、出生後日齢が進むにつれて、Notch3の発 現は全ての精原細胞ではなく、一部の精原細胞に限られていることが分かった。そこで、Notch3を発現してい る精原細胞の性質を調べるため、W/WV変異マウス、及び停留精巣マウスの精巣において、Notc h3とc-Kitに対する免疫染色を行った。その結果、c- Kitの発現が見られない未分化な精原細胞にNotch3の発現が確認された。
現在、生殖幹細胞の細胞周期は極度に遅いことを利用し、BrdUを取り込ませたマウスの精巣を用いて、Notch 3を発現している未分化な精原細胞が幹細胞を含むか検討中であり、この結果もふまえて報告する予定である 。


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