○津田 雅之1,2 笹岡 由美子1,3 原口 清輝4 相賀 裕美子1,2,3
遺伝研・発生工学1,CREST2,総研大3,滋賀医大・微生物 4
ショウジョウバエの nanos
遺伝子は始原生殖細胞の移動や分化に必須の遺伝子である。我々はマウスにおける生殖系列の確立機構を
分子レベルで解明する目的で、マウスのnanos ホモログの単離を試みた結果、3種類のnanos
ホモログ(nanos1、2、3)をクローニングすることに成功した。nanos1は神経系に発現が強く、初
期の生殖細胞での発現はみられなかったが、nanos2、3はin situ hybridizationや RT-PCR
による発現解析から、生殖細胞において発現していることを以前の本大会で報告した。今大会ではnanos2ノックアウトマウスを作製したので、その解析結果について報告する。
ホモ変異マウスは雌雄共に外見
上異常はなく、また雌の卵巣の形態に異常はみられず、妊娠可能であった。しかし、雄において成体精巣の矮
小化が認められ、その組織切片の観察では、精巣内の生殖細胞が完全に消失している。生殖細胞マーカーに
よる免疫染色や、TUNEL 法の結果から、nanos2
ホモ変異マウスでは、雄の生殖巣において、生殖細胞がE15.5
からアポトーシスにより減少し始め、最終的に成体精巣において完全に消失することが明らかとなった。これ
らの結果は、Nanos2 が生殖細胞(前精原細胞)の維持に関わっている可能性を示唆している。
ショウジョウバエにおいて、nanos 3’UTR
は転写産物の翻訳制御や局在に関与することが示されている。マウスのnanos2 3’UTR
についてもその可能性を調べるために、lacZ 遺伝子に nanos2 の3’UTR
をつなげた遺伝子座を持つノックインマウス(nanos2L-
3’UTR/+)を作製し、以前作製した、nanos2
3’UTRを持たないマウス(nanos2L/+)と比較検討した。nanos2
が発現する組織においてLacZ 染色の比較を行った結果、卵母細胞において、 nanos2L/+
においてのみLacZ
の染色が見られた。また、胎児期の雄の生殖巣においては、LacZの染色が比較的早く減少するnanos2L
/+ に比較し、nanos2L-3’UTR/+ の LacZ
活性は発生後期にまで強く残ることがわかった。これらの結果は 3’UTR がnanos2
の発現調節に関与していることを示唆している。現在、Nanos2 タンパク質の機能とともに、3’UTR
の機能についてもさらに解析中である。
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