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カエル胚のトリニティ:デターミナントと誘導による初期胚パターニング


坂井 雅夫

鹿児島大・理・生命化学


私達はこれまで、ゼノパスを材料として、初期発生過程でボディプラン(体制)がどのように形成さ れていくかについて主として実験形態学的手法で研究を進めてきた。この発表では、現時点での私達の考える 体制形成メカニズムについて述べ、ご来会の皆さんと討論したい。
1. 発生の最初のステップでは、未受精卵に最初から局在している細胞質デターミナントによって3つの胚領域が 細胞自律的に規定される。未受精卵には植物極付近の比較的狭い領域に局在する背側デターミナント(分子 的実体は不明)、植物半球全体に分布する内・中胚葉デターミナント(分子的実体はVeg- T)が存在し、背側デターミナントがVeg- Tが中間的濃度で存在する帯域に到達することによってオーガナイザー形成の引き金が引かれる。この時 点でできるのは、オーガナイザー領域、動物側の反応能のある外胚葉領域、オーガナイザーを除く植物側の内 中胚葉領域である。
2.オーガナイザー形成のための誘導(いわゆる中胚葉誘導)は存在せず、ニューコープ・センターも存在しない 。
3. 遺伝子発現が開始する中期胞胚期以降に、それらの領域の誘導的相互作用によって背腹、前後の体軸が形 成される。オーガナイザー領域は動物側の反応能のある外胚葉領域を背側化し、オーガナイザー以外の植物 側領域は、動物側の領域を後方化/中胚葉化する。
この理解は、これまで両生類の初期発生モデルで中心的な働きをしてきた次のようなコンセプトを放棄すること を要求する。ニューコープ・センター、(卵割期での)中胚葉誘導、頭部オーガナイザーと胴尾部オーガナイザー 。


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