○藤田 深里1 長屋 雅人1 Wee Seng Kew1 石川 裕二2 猪早 敬二1 今井 義幸1 工藤 明1
東工大・院生命理工・生命情報1,放医研2
脊椎動物の心臓の形態形成は、時間的空間的に秩序だった多くの過程からなる。その過程の障 害による先天性心疾患は、出生児の1%、流産児の10%以上に認められる。心臓の分化・発生に関与する遺 伝子は多数単離されており、ノックアウトマウスの解析から、先天性心疾患や多くの心臓病の原因となる心肥 大と深く関係していることが明らかになりつつある。しかしながら、それら遺伝子の発生過程における発現や 機能はまだ不明な点が多い。そこでわれわれはメダカの心臓発生を、心臓特異的マーカーを用いて検討した。 さらにフォワードジェネティクス的な解析を行うため、ENU処理によるメダカミュータントをスクリーニングし、3 つの心臓異常ミュータントを単離した。硬骨魚類であるメダカは、幼生期まで透明で顕微鏡下で心臓の発生を 観察することができる。今回報告する心臓異常ミュータントは、心房心室の境界に閉塞を生じるbht (big heart tube)、拍動が弱く心筋発生異常を示すrbi (red blood island)、そして、心室筋に欠損をきたすsdc (slowly developed and congestion)の3種類である。bhtは心筋マーカーの発現から血流開始前から心筒に細い部分が確認され、心臓 発生の初期から異常を示している。rbiは心筋マーカーが野生型に比べ強く発現することから、心筋形成および 機能に異常があると考えられる。また、sdcは心室筋の一部が欠失し、心房はやや長い形態を示す。これら3つ のミュータントの原因遺伝子をマッピングしたところ2つについてリンクが明らかになり、bhtはLG9、rbiはLG21 であった。現在各ミュータントについて形態異常のより詳細な解析および原因遺伝子の同定が進行中である。
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