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Drosophila Osa相同分子であるPSA- 10は、線虫において非対称分裂を制御する


内田 真啓1  竹下 久子1  岡野 栄之2,3  澤 斉1,4

理研CDB1,慶応大・医・生理2,CREST JST3,神戸大・自然科学4


非対称分裂は、単細胞、多細胞を問わず生物の発生の様々な過程において、細胞の多様性を生 み出す為の重要なプロセスである。線虫の表皮T細胞は、LIN-44/Wnt及びLIN- 17/Frizzledによって制御される非対称分裂によって表皮系(T.a系譜)及び神経系(T.p系譜)の細胞を生じる。lin-44およびlin- 17変異体ではしばしば、Tp.系譜から生じる神経系の細胞が消失するという表現型を示す。我々はこの表 現型を指標にしたスクリーニングにより多数の変異体を得ている。それらの変異体のうちpsa- 1及びpsa- 4変異体の解析により、SWI/SNF染色体構造変換複合体がT細胞の非対称分裂に関与する事を以前明ら かにした。SWI/SNFは酵母における非対称分裂の際にも重要な役割を果たす事が知られている。これにより 線虫においても酵母と同じような機構で非対称分裂が制御される可能性が示されたが、そのメカニズムは不 明のままである。
今回、psa-10変異体の遺伝子クローニングを行った。psa- 10は1,768アミノ酸から成る、Drosophilaの Osa相同分子をコードする全長約13kbpの新規遺伝子であることが明らかになった。psa- 10::gfp融合遺伝子を構築して解析した結果psa- 10はUbiquitousに発現しており、その細胞内局在は主に核であった。T細胞系譜においては、T細胞及びそ の両娘細胞T.a、T.pに発現が観察された。またT細胞の分裂期においては、細胞質全体に一様にシグナルが 観察された。
DrosophilaにおいてOsaは、SWI/SNFの相同因子であるBrahma複合体の構成因子としてWingless標的 遺伝子の転写を制御することが知られている。しかしながら、SWI/SNFによるWNTシグナル依存的な標的遺伝 子の発現制御の機構は依然不明な点が多い。PSA- 10の機能解析が、WNTシグナルとSWI/SNFとのつながりや非対称分裂制御機構の解明に貢献すると期待され る。


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