○北嶋 聡1 宮川ー富田 幸子2 高橋 雄1 井上 達3 菅野 純1 相賀 裕美子4
国立衛研・毒性1,東京女子医・循環器小児科2,国立衛研・安全性生物 試験セ3,国立遺伝研・発生工学4
bHLH型転写因子MesP1およびMesP2遺伝子は、マウス7番染色体上で約20kb離れて存在する。 原腸陥入直後の中胚葉に一過性に発現するMesP1を欠損したマウス胚は細胞移動の遅延により、心臓の形 態形成異常が生じ、胎生10.5日以前に死亡する。さらに同じ領域でわずかに発現しており、相補的に機能でき るMesP2も欠損したダブルノックアウトマウス(dKO)胚は、ほとんどの胚性中胚葉を欠き、原腸陥入部位には未 分化中胚葉の蓄積が観察され、細胞の移動が全く起こらない。さらに、野生型胚とのキメラ解析をおこなった結 果、dKO細胞は心臓に寄与しないことが明らかになり、細胞自律的な欠損であることが示された。また、このMesp1発現細胞の細胞追跡実験により、Mesp1発現細胞は、心臓ならびに血管系の前駆細胞であ ることも示してきた。 今回我々は、さらに詳細に両遺伝子の機能解析を検討する目的で、dKO胚におけるMesp1発現細胞(M esP1, MesP2欠損細胞)の挙動ならびにMesp1の発現を指標としたキメラ解析を検討することとした。この目的 のために以下のようなdKOマウスを作製した。すなわち、同一染色体上でMesp2遺伝子座をピュ?ロマイシン耐 性遺伝子で置換した上で、Mesp1遺伝子座にCreリコンビナーぜを導入したマウス(P1Cre- P2puroマウス)を作製した。すでにgermline transmissionを確認しており解析中である。このマウスを用いた解析により、心臓と血管系の発生制御の違い 、ならびにMesp1、Mesp2両遺伝子の役割が明らかになるものと考えられる。
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