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ショウジョウバエ中心複合体神経回路網の発生過程の解析


神谷 真理子1,2,3  伊藤 啓1,2,3  粟崎 健1,2,4

東京大学 分子細胞生物学研究所1,基礎生物学研究所2,科技団・BIRD3,科技団 ・さきがけ4


昆虫の成虫脳のほぼ中央部分には中心複合体と呼ばれる特徴的な脳領域が存在している。中心 複合体の機能については未だ不明の点が多いが、複数の昆虫種において中心複合体が歩行の制御に関与し ていることが示されており、このことから中心複合体は昆虫種において共通した高次の行動制御機能を有して いることが指摘されている。ショウジョウバエの中心複合体はellipsoid body (eb)、fan-shaped body (fb)、protocerebral bridge (pb)、noduli (no) と呼ばれる4つの脳領域から構成されており、それぞれは、楕円状、扇状、棒状、こぶ状といった特徴的な構造 を有している。eb、fb、pbには、それぞれ環状、カラム状、糸球状といった特徴的な神経線維構造が存在してお り、各脳領域は介在神経により連絡することで、複雑な中心複合体神経回路網を組織している。我々は、こうし た特徴的な脳領域の構造や神経回路網がどのようにして形成されていくのかを知ることを目的として、中心複 合体の発生機構に注目した。幼虫期のショウジョウバエ脳には成虫で見られるような特徴的な中心複合体の 構造が見られないことから、成虫の中心複合体神経回路の大部分は蛹期に形成されることが予想される。そ こで、まず神経細胞を特異的にラベルする様々な抗体やエンハンサートラップ系統の中から蛹期の中心複合 体のラベルに適した抗体、系統の探索を行った。次いで探索により得られた抗体、エンハンサートラップ系統を 利用して蛹期の中心複合体の構造変化を発生ステージを遡って詳細に解析した。その結果、幼虫期における 中心複合体の前駆構造と蛹期における中心複合体構造の形成過程を明らかにすることができたので、このこ とについて報告する。


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