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ROBOは体節縦断時に提示されたネトリンへの反応性を変化させる


平本 正輝1,3  広海 健2,3

科学技術振興事業団 さきがけ研究211,科学技術振興事業団 戦略的基礎研究推進事業2,国立遺伝学研究所 発生遺伝研究部門3


分泌型軸索ガイダンス分子は濃度勾配を形成し、軸索に対して方向や位置を知らせていると考え られている。しかしその様な濃度勾配が観察された例はなく、まだ確立した概念はない。SlitリガンドとROBO (Roundabout) 受容体は濃度勾配を形成し、ショウジョウバエ胚では正中線からの反発場を形成すると考えられている。round about 遺伝子(Slit受容体)の変異体は本来真っ直ぐのびる縦走神経が正中線へ引き寄せられたかの様に曲がる。そ の結果あたかもRoundabout(ロータリー)の様に軸索が伸びるためこの名前がついた。ROBOは進化的に保存 された分子であり、ショウジョウバエのこの表現型は化学走性説を強く支持する事実の一つとして扱われてい る。 ところで、我々はネトリンがFrazzledによって横行神経に分布する事を見出した。Frazzledの作用によって分布 したネトリンは縦走神経であるdMP2のガイドに寄与する。dMP2は伸長初期はネトリンが分布する領域に沿っ て伸びるが、次の体節に入る時に、ネトリン領域に侵入する。一方で、ROBO変異体ではdMP2がロータリーの 様に正中線を中心とする円を描く。この時の軌跡は提示されたネトリンが存在する領域の境界と一致しており 、ROBO変異体では常に提示されたネトリンに沿って伸長する。我々は、ROBOは体節を越える時に提示され たネトリンに対する反応性の変化に寄与しており、roundabout変異体におけるロータリー様の軸索走行はSLIT の化学走性作用の証拠ではなく、この原因に起因する事を報告する。


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