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側線神経に異常を示す突然変異体の単離および解析


野島 康弘1,2  松山 剛暢2,3  李 海昌1,2  前田 龍2  田中 英臣1,2  和田 浩則2  西脇 優子4  政井 一郎4  川上 厚志5  岡本 仁1,2

科技団・戦略1,理研・脳センター・発生遺伝子2,東京医薬専3,理研・政井独立主幹4,東大・院理・生物5


側線神経は魚類および両生類の体表に存在し、水の振動や圧力を感じる感覚器官である。側線 神経の発生は、ニューロマストと呼ばれる細胞群が特異化され、それが体幹の背腹軸の中央を後方に向かっ て移動する。移動の途中、小細胞集団がくびれ、それらは有毛細胞と支持細胞に分化する。一方、側線神経の 神経節細胞の末梢軸索はニューロマストの後を追うように後方へ伸展し、途中分化する有毛細胞を神経支配 する。このような発生過程から、側線神経は細胞分化、軸索伸展などのよいモデルになっている。我々は、神 経発生のメカニズムを明らかにするために、ゼブラフィッシュを用いてENUによる変異導入を行い、側線神経に 異常を示す変異体の単離を行ってきた。具体的には神経軸索を可視化できる抗体を用いて3日目胚を染色する ことによって約700ファミリーをスクリーニングし、側線神経に異常を示す変異体7系統および脊髄神経に異常 を示す変異体2系統を単離した。今回はそれら変異体のうち側線神経の伸展に異常を示す rw87について表現型の解析およびBulk Segregant Analysis(BSA)による原因遺伝子の同定を試みた。rw87は発生過程において側線神経の先端に形成されるニ ューロマストが体幹中央ではなく腹側を移動し、さらに側線神経軸索もニューロマスト同様に腹側を伸展する表 現型を示す。このことは、ニューロマストが正常な経路を移動できず、それに伴い神経軸索も異常な経路を辿る 変異体であると考えられる。ニューロマストの移動に必要なメカニズムを明らかにするために、rw87の遺伝子 座を解析した。約300個体(600 meiosis)について組換え率を調べた結果、変異遺伝子は第7染色体上約0.7cM の領域に特定することできた。近傍には既知の遺伝子あるいは変異体がマップされていないこと事から、rw87 変異は新規遺伝子の変異であると考えられる。


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