○大場 美奈子1,2 野呂 知加子3 友岡 康弘2 天沼 宏1 渥美 忠男1
理化学研究所1,東京理科大学・院基礎工・生物2,理化学研究所筑波B RC3
近年ES細胞だけではなく、ES様の多能性幹細胞(MAPC)やオリゴデンドロサイト前駆細胞、シュ ワン細胞がin vitroで無制限に自己複製させられることが報告された。神経幹細胞の培養法は発展してきているが、これまで それを安定に自己複製させ続ける方法は確立していなかった。今回我々は任意のマウス胎仔とES細胞より、 限りなくin vitroで増殖し続ける神経幹細胞クローンを得る方法を確立した。 神経幹細胞クローンとしては主に14日目マウス胎仔由来のBR2/4とES細胞由来のNS5を用いた。培地には一 般的に用いられている神経幹細胞の培養液を多少修飾したものを使用した。マーカーとしてはネスチン(幹細 胞)、TUJ1(神経)、GFAP(アストロサイト)を用いた。 神経幹細胞の培養では大別して、浮遊培養と付着培養の2種類がある。それらを比較したところ、単一細胞由 来のクローンは付着培養のみで得られ、メチルセルロースを用いた半固形培養ではコロニーが全く形成されな かった。付着培養で神経幹細胞はほぼ均一な形態の細胞集団として安定に、維持し続けることができた。 EGF、FGF2共に神経幹細胞の増殖を支持したが、EGFでは未分化状態を保っていた。FGF2では約1週間で神 経細胞への分化が観察された。FGF2以外ではFGF- 4が同様に神経への分化を支持した。それ以外の因子では多くの細胞は死滅し、生き残った細胞はアストロサ イトであった。FGF2での神経への分化は細胞の密度によって影響を受け、低密度ではほとんど分化しなかった 。 付着培養で得られた神経幹細胞を浮遊で継代した場合、著しく神経細胞への分化能を低下させた。 神経幹細胞の自己複製ではEGFが重要な役割を果たしており、神経細胞への分化にはFGF2またはFGF- 4が必須であったが、分化そのものには細胞密度、神経幹細胞自身の間での相互作用が重要である。
Page Copyright (C) 日本発生生物学会 All Rights Reserved.