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ニワトリ脳神経系に発現する新規遺伝子の解析


豊田 礼子  仲村 春和  渡邉 裕二

東北大学大学院生命科学研究科,東北大学加齢医学研究所


ニワトリ初期胚の中脳胞翼板は将来視覚の中枢となる視蓋へと分化する。視蓋は著しい細胞増 殖により膨らむが、その分子機構を解明するため、中脳背側領域に発現する新規遺伝子を探索した。ニワトリ 3日胚中脳背側の組織由来のcDNAと、Sonic hedgehogを発現させ腹側化した中脳組織由来のcDNA間のサブトラクションにより背側組織に差次的に発現す るクローンを単離した。mRNAの発現パターンによる選別の後にcDNAライブラリーのスクリーニングを行い、 二つの新規遺伝子の翻訳領域全長をクローニングした。一つは12個のleucine-rich repeat、1つのIg ドメイン、膜貫通ドメイン を有するNLRR-1をコードしている。これまでにleucine-rich repeat protein として膜貫通性のものではEGFRの阻害分子であるkek1や、神経・筋肉の発生に関与するtartan、分泌性のも のとして軸索誘導に重要な役割を果たすslitなど、神経系の発生に関与する分子が多数報告されている。In situ hybridization の結果、初期胚の脳においてはventricular zone に発現していることが分かった。もう一つはimmunoglobulin super familyに属するタンパク質をコードする新規遺伝子である。これはDCCやNeogeninなどとよく似た構造をしてお り、4つのIgドメインと5つのfn3ドメインを有する。mRNAの発現は初期胚の脳および体幹部の神経管において 背側のventricular zoneに見られる。発現パターンと、同じファミリーの分子の機能から、今回クローニングした二つの新規遺伝子 は神経系の発生、分化に深く関わるタンパク質をコードしていることが予想されるので、現在その機能を解析し ているところである。


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