○高橋 範行1 大森 慎也1,2 栃本 直子1 伊藤 万里1,2 稲森(色摩) 雅子1 信賀 順1 長田 真一1,2 平良 眞規1,2
東大・院理・生物科学1,科技団・CREST2
アフリカツメガエル後期原腸胚の前部神経外胚葉領域より作成したcDNAライブラリーを体系的に 検索することで、脳の発生に関与する新規遺伝子の単離を試みた。本ライブラリー由来の1,819個の5′ESTs は1,470個のクラスターを形成し、その既知の遺伝子や蛋白質への相同性により、機能別の19のクラスに分類 した。うち約6%がシグナル伝達か遺伝子発現調節への関与が示された。配列の相同性検索より機能予測に適 う情報が得られなかったクラスター796個(54%)については、その遺伝子の発現パターンを全胚in situハイブリダイゼーションにより解析した。その結果、神経管形成時期の前部外胚葉を含む神経板領域・ 神経堤で約2割(22%)が発現し、この中から前部神経外胚葉で領域特異的または一様に発現するアフリカツメ ガエル新規遺伝子の候補26個を得た。この中には予定中脳後脳境界(MHB)領域で早期に発現する既出のXH R1が含まれるが、それ以外では脳領域の運命地図に則した発現様式の遺伝子は見出されなかった。このこと より、後期原腸?初期神経胚期にはMHBを除いた予定脳領域の詳細な運命決定は未だ充分にはなされてい ないことが示唆された。今回の探索でこれまでに、アフリカツメガエルの新規遺伝子としてscribble-related protein 1 (SCRP1)、p54nrb、XSEMA6D4を得ている。発現パターンで特に興味深いものとしては、原腸胚後期で前部神 経外胚葉での発現が認められたXLF01991、神経板全体の発現が発生に従い前方に限局するXLF01196、正中 線上を除く原口周辺及びMHB付近に特異的な発現の見られたXLF02244などが挙げられる。このように領域化 cDNAライブラリーのESTs解析と発現パターン解析を組み合わせることにより、高率に脳発生に関連した遺伝 子の同定することが示された。
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