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配偶子特異的遺伝子プールの作製とRNAiを用いた網羅的機能解析


村本 哲哉  小原 真司  田仲 可昌  漆原 秀子

筑波大・生物


我々は受精の遺伝子支配を包括的に理解するために、ゲノムサイズが小さく有性生殖過程の人 為的コントロールが可能な細胞性粘菌を用いて研究を行っている。これまでに、性的成熟細胞で発現する遺伝 子から未成熟細胞で発現する遺伝子を差し引いた配偶子特異的サブトラクションライブラリーを作製し、その解 析を行ってきた。今回は、このライブラリーに含まれる全遺伝子対して、リアルタイム定量PCRによる発現解析 を行い、発現が2倍以上に増加する遺伝子67個を同定した。これらの中には、シグナル伝達関連遺伝子の新奇 ras遺伝子やracF2遺伝子などが多く含まれていた。また、配偶子機能に関わる可能性のある他 生物の遺伝子と相同性があるものや細胞接着に関わる分子がいくつか含まれていた。これらのことから、この 特異的遺伝子プールは、配偶子機能に関連する遺伝子を多く含んでいると期待される。その中の一つのFC- IC0003は、第35会大会にてクラミドモナスの配偶子特異的遺伝子a2と相同性があり、有性生殖に関わ っている可能性を報告したが、今回、交配型特異的(20 : 1)に発現していることが分かったので、gmsA遺伝子(gamete and mating-type specific gene A)と名付けた。gmsA遺伝子破壊株は、野生株に比べて性的細胞融合能が低下することから、 gmsA遺伝子が細胞性粘菌の有性生殖発生に必須ではないが関わっていると考えられる。現在、他の 配偶子特異的遺伝子全部を対象として大規模機能解析に適したRNAi法を用いることにより有性生殖機能に 関わる遺伝子の同定を試みている。


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