○葭田 敏之1,2 石川 烈2 江藤 一洋1 井関 祥子1
東京医科歯科大学医歯学総合研究科分子発生学分野1,東京医科歯科大学医歯学 総合研究科歯周病学分野2
頭蓋冠は複数の膜性骨とそれらを結びつける線維性組織である縫合により構成されている。また 、これら骨と脳の間には3層の膜構造よりなる髄膜が存在し、それぞれ硬膜、クモ膜、軟膜と呼ばれる。最表層 の硬膜は頭蓋冠の形成に重要な役割を果たしていることが示されている。転写因子であるTwistは主に間葉 系細胞に発現して細胞の分化を抑制する働きを持ち、頭蓋冠においては未分化な骨芽細胞と縫合部及び髄膜 に発現している。ヒトTWISTの機能欠失型変異は縫合が早期に癒合する頭蓋骨癒合症の原因となる。本研究 において我々は、Twistを発現するアデノウイルスベクターを用いてTwistの発現を増強し、胎生期の頭蓋冠形 成への影響を検討した. 我々は胎齢13.5日(E13.5)のマウス胎児頭部皮下に子宮外胎児手術法を用いてベクターのインジェクションを 行った。手術後96時間でサンプリングし、骨関連遺伝子の発現をin situ hybridization法を用いて検討した。発生期において頭部の組織には皮膚と脳の間に外側より結合組織、骨形 成層、髄膜の3層の構造が確認される。Twistの発現が骨形成層や結合組織に得られた場合, 骨の厚みがやや薄くなる傾向はあったものの, 大きな変化は見られなかった.一方髄膜に発現した場合、骨形成マーカーの発現領域が非インジェクション側 より小さく、骨のドメインの成長が抑制されていた。また、この時の髄膜における遺伝子発現を検討した結果、 転写因子であるMsx-1の発現に変化はなかったが、分泌タンパクであるbone morphogenetic protein (Bmp) - 7およびBmp4の発現は大きく低下していた。 以上の結果から、正常発生において髄膜はBmpなどを分泌することによりその外側に発生している頭蓋冠骨 の成長を制御している可能性が示唆された。
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