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Hoxa-13による四肢軟骨の成長・分化の制御機構の解析


白石 洋一  黒岩 厚

名大・院理・生命理


四肢軟骨形成過程においては、肢芽間充織細胞が凝集して位置特異的な形状を持つ軟骨凝集 塊となった後、手根/足根部においては短い軟骨を、それ以外の領域においては軟骨膜を備えた長い軟骨を形 成する。軟骨のパターン形成及び成長・分化の過程には、Hox遺伝子群が関与する事が知られている。 中でもHoxa- 13は軟骨パターン形成以前には最も遠位部の自脚間充織で、また軟骨の成長・分化期には自脚軟骨の軟 骨膜に隣接した外側の領域で発現する。 レトロウィルスベクターを用いて、ニワトリ肢芽間充織全域でHoxa- 13を異所的に過剰発現させると本来Hoxa- 13が発現しない軛脚において軟骨分化が阻害され、軟骨が短縮する。我々は、本来軟骨形成の進行と並 行して軟骨膜外側の狭い領域に収束するWnt5bの発現が、Hoxa- 13異所的過剰発現肢軛脚では軟骨膜外側の広い領域で維持され続ける事を発見した。軟骨膜外側にお けるWnt5bの発現の変化は、Hoxa- 13異所的過剰発現肢の自脚においても同様に認められた。これらの結果は、軟骨の成長・分化期に軟骨 膜外側の領域に配置されるべき細胞の挙動及び/あるいはこの領域におけるWnt5bの発現にHoxa- 13が関与している可能性を示唆する。現在はこの可能性を検証するべく、優性機能欠損型HOXA- 13(第35回大会にて報告)を用いて解析を進めている。 一方、軟骨細胞においてWnt5bを過剰発現するトランスジェニックマウス胚では、四肢軟骨の分化が抑 制される(Yang et al., 2003)。我々は現在、軟骨膜外側で発現するHoxa- 13Wnt5bを介して軟骨分化を制御している可能性を検証するべく、軟骨膜外側領域を含めた肢芽 間充織においてHoxa- 13Wnt5bをそれぞれ過剰に発現させた際の表現型の比較を進めており、本大会ではその結果に ついても報告する。


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