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ジーントラップにより得られた、脊索特異的に発現する新規遺伝子、sickle tail、の解析


仙波 圭1  王鳳 山1  李 正哲1  関本 朝久1  鈴木 操2  阿部 訓也4  荒木 正健3  荒木 喜美1  山村 研一1

熊本大学・発医研・臓器形成1,同・動物資源開発センター2,同・遺伝子 実験施設3,理研・動物変異動態解析技術開発チーム4


トラップベクターpU- Hachiにより得られた遺伝子変異マウスAyu8021ラインのレポーター遺伝子β- geoの発現は胚生期に脊索特異的に主に発現し、また、成体においては尾椎椎間板髄核に強く発現、脳梁、精 巣の支持細胞、心筋、腎尿細管でも発現していた。このAyu8021ラインのホモ接合体の成体は尾椎末端に限局 した椎体の弯曲・短縮、椎間板髄核の消失を示す。RACE法およびRT- PCR法により、このラインがトラップしている遺伝子のcDNAを単離し、塩基配列を決定したところ、いくつかのE STの配列とホモロジーを認めるのみで新規遺伝子であると考えられた。最も長いopen reading frameには1352アミノ酸からなる147kDaの蛋白がコードされていたが、既知のドメイン、モチーフは全くみられな かった。成体の表現型が鎌状に変形した尻尾尖端を示すことより、この遺伝子をsickle tail ( st )と名付けた。st遺伝子は0.5Mbのgenomic DNAの領域に少なくとも19のexonより構成されており、トラップベクターはその14番目のintronに挿入されてい た。ES、胚、成体の各臓器から抽出したRNAを用いたNorthern blot法による解析では、ES、胚で8kbと6kbにシグナルを認め、成体の各臓器では約8kb、7kb、6kbの種々のス プライスバリアントの存在を認めた。また、st遺伝子のC- 端に対するペプチド抗体を作製し、マウス成体の尾椎椎間板髄核の抽出物でWestern blotによる解析を行なったところ約150kDの蛋白質を検出でき、これは、予想されたORFの配列を強制発現させ たCOS細胞の抽出物で検出できたものと同じサイズであった。マウス成体の尾椎椎間板髄核より作製した免疫 組織染色の結果より、SICKLE TAIL蛋白は細胞質に存在すると考えられた。Ayu8021ラインのホモ接合体尾椎椎間板髄核の抽出物ではこの 抗体で検出できるSICKLE TAIL蛋白は認められず、トラップベクターの挿入位置から考えると、ホモ接合体ではC端の355アミノ酸がtrunc ateされた蛋白が作られていると考えられた。このように、st遺伝子は、尾椎の形成に重要な役目を果たす遺伝 子であると考えられる。


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