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ゼブラフィッシュ初期胚におけるジチオカーバメート農薬チウラムによる脊索彎曲


南場 里美1  浦川 さつき1  董 武1  今川 智敬2  寺岡 宏樹1  平賀 武夫1

酪農学園大・獣医・毒性1,鳥取大・農学・解剖2


【目的・背景】チウラム(tetramethylthiuram disulfide)は主要な殺菌剤や忌避剤として古くから使用されているジチオカーバメート農薬であり、成魚のLD50 値から比較的魚毒性が高いとされている。一方、発生段階のニジマスに脊索の波状彎曲を起こすことが報告 されているが、その機序は不明である。今回、環境毒性モデルであるゼブラフィッシュ胚を用いて、チウラム暴 露による発生毒性機構を調べた。【成績】1)受精後3時間胚(3hpf)にチウラムを暴露して24hpfまで観察したと ころ、脊索の波状彎曲、体節の変形、卵黄嚢突起および体長の短縮がみられた。ED50はおよそ7nMで、10nM でほぼ100%に影響がみられ、死亡率は1uMでもほぼ0%だった。2)チウラム暴露群での脊索彎曲は胚の自発 性収縮が起こる18hpfから始まり、収縮に伴って脊索彎曲が進行した。3)麻酔処置で自発性収縮を抑制すると 、チウラム暴露群での脊索彎曲は顕著に抑制された。4)体節は一度正常なV字形が形成された後、ヘッジホッ グミュータントと類似したU字形へと変形したが、shhやen1発現に変化はなかった。5)いくつかの初期体節マー カー遺伝子発現に変化はなかった。【結論】チウラム暴露による脊索の波状彎曲は、胚の自発性収縮により進 行する事が示唆された。また、今回の使用濃度が環境基準を下回ることから、生態系への影響を検討する必 要が考えられる。


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