○小林 大介1 猪早 敬二2 景 崇洋3 北川 忠生3 木村 哲晃1 澤田 篤4 神藤 智子3 高島 茂雄3 横井 勇人1 成田 貴則3 田中 実5 成瀬 清3 三谷 啓志6 堤 真紀子7 堀 寛7 石川 裕二8 荒木 和男9 工藤 明2 相賀 裕美子1 武田 洋幸3
遺伝研・発生工学1,東工大・院生命理工2,東大・院理・生物科学3 ,理研・発生再生研4,北大・院理・生物科学5,東大・新領域・先端生命6 ,名大・院理・生命理学7,放医研・生物影響8,養殖研・細胞工学9
我々は脊椎動物の発生現象の理解を目指し、メダカをモデル動物として用いたN-ethyl-N-
nitrosourea
(ENU)による突然変異体の作成とそのスクリーニングを行っている。スクリーニングは飼育温度30℃で受精後
2日及び4日の胚の観察を行い、形態形成の異常を伴う突然変異体の単離を行った。その中で胴尾部の形成に
関わる突然変異体として、4日胚において胴尾部が著しく屈曲した表現形を示す変異体が得られ、その形態的
な特徴からtoguro
(tgr)と名付けられた。tgrの出現頻度はメンデルの法則に従うことから劣性の当然変異体である
と考えられる。一方その胴尾部の屈曲の程度には差が観察され、わずかに尾部が屈曲する程度のものから胴
尾部がとぐろを巻いた様な形態をとる激しい異常を伴うものまで含んでいた。このことからtgr突然変異
体が温度感受性である可能性が疑われた。そこで胚の飼育温度を様々に変化させ、表現形の変化を観察した
。飼育温度を32℃から20℃の範囲で変化させて観察を行った結果、高温飼育下でより激しい表現形を示し、
tgrは高温感受性の突然変異体であることが明らかとなった。
受精後10日の幼魚を用いてtgr幼魚のアリザリンレッド染色を行ったところ、tgrではほとんど骨形
成が起こっていないことが明らかとなった。次に、椎骨が由来する硬節の分子マーカーとしてpax1遺伝
子を用い、その発現パターンをin
situハイブリダイゼーション法を用いて調べた。その結果tgrの胚においては硬節におけるpax1の発現が消失もしくは大きく低下しており、硬節の形成に何らかの異常があること考えられた。また、硬節が
分化を開始する時期と表現型が温度感受性を示す時期とが一致していたこも、この考えを支持している。表現
形の解析と合わせて、現在tgrの原因遺伝子を明らかにするべくポジショナルクローニングを行っており
、その現状についても合わせて報告する。
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