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ホヤ脊索形成過程における転写抑制因子MadホモログCi-Noto7の機能解析


堀田 耕司1  山田 成宏2  五條堀 孝1  佐藤 矩行3,4  上野 直人2  高橋 弘樹2,4

遺伝研・CIB- DDBJ1,基生研・形態形成2,京大・院理・動物3,JST・CREST4


脊索は脊索動物群を特徴付ける重要な器官である。ホヤの脊索は110細胞期以降、2回の分裂を 経て幼生の尾部中央に正確に一列に40個の細胞が並ぶシンプルな組織である。我々はこれまでにカタユウレ イボヤ脊索特異的遺伝子約40を転写因子Brachyuryの下流遺伝子の中から単離してきた(Takahashi et al., 1999, Hotta et al., 2000)。Ci- Noto7はこれらの遺伝子のうちのひとつである。この遺伝子はc- myc依存型トランスフォーメーションを抑制するヒトの配列特異的転写抑制因子Mad4と類似しており、helix loop helix domainをもつことが配列解析から示唆される。脊索細胞は神経胚期で分裂を止めることから、ホヤではこの遺 伝子が脊索の細胞増殖過程に関わっている可能性が示唆されていた。
今回、この遺伝子の脊索における機能を調べる目的で脊索細胞特異的に発現するGFP発現ベクターとともに この遺伝子のMorpholinoアンチセンスオリゴをカタユウレイボヤ受精卵に顕微注入し尾芽胚期での影響を調べ た。その結果、脊索形成過程を明らかにする上で新しい知見を与えると思われる非常に興味深い表現型を示 したので報告する。この表現型は脊索細胞特異的GFPが発現している細胞の伸長が一列ではなく複数の方向 へ枝分かれしているように見え、中にはY字状になったものも観察された。またその伸長方向が不規則であっ た。Ci- Noto7は転写抑制因子をコードしていると示唆されることから、この遺伝子の翻訳を阻害することによって 下流の遺伝子の発現抑制が解除された結果、複数方向へ伸長した脊索が生じたのではないかと考えている。 現在、他の脊索特異的遺伝子の発現に及ぼす影響も考慮に入れて解析を進めている。


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