○高橋 雄1 北嶋 聡1 井上 達1 菅野 純1 相賀 裕美子2
国立衛研・毒性部1,国立遺伝研・発生工学2
Mesp1, Mesp2は、体節形成の直前に共発現する転写因子である。Mesp1欠損マウスでは体節形成に異常はみられな い。Mesp2欠損マウスでは上皮性体節が形成されないが、皮筋節は形成される。遺伝子置換によるレスキュ ー実験からMesp1, Mesp2は重複した機能をもつと推察されるが、Mesp1, Mesp2ダブルノックアウトマウスでは中胚葉の大部分が形成されず早期に死亡するため、体節形成における 機能的重複は不明であった。今回我々は、8細胞期胚の凝集により野生型細胞とダブルノックアウト細胞また はMesp2欠損細胞のキメラ胚を作製し、体節形成における各細胞の寄与を解析した。ダブルノックアウト細胞 またはMesp2欠損細胞はRosa26遺伝子座によるb-ガラクトシダーゼ活性で標識した。 野生型細胞とダブルノックアウト細胞のキメラでは正常な体節は形成されないが、皮筋節と硬節は形成されて いた。未分節中胚葉では2種類の細胞がランダムに混在しているのに対して、皮筋節はほぼ完全に野生型細 胞で、硬節は主にダブルノックアウト細胞で占められていた。このことから皮筋節の形成にはMesp1またはMes p2のいずれかが細胞自律的に必要であると考えられた。また野生型細胞とMesp2欠損細胞のキメラでは、野 生型細胞のみからなる上皮性の不規則な小塊が形成され、Mesp2欠損細胞は上皮化した領域から排除される 傾向がみられたが、部分的に上皮にも寄与していた。これらの結果からMesp1, Mesp2は体節中胚葉の上皮化に細胞自律的に関与していると考えられる。 ダブルノックアウト細胞からなる硬節では体節後半部のマーカー遺伝子Uncx4.1の発現が一様に拡がっており 、脊椎骨の神経弓が癒合していた。これはMesp2欠損マウスの形質と同様であり、ダブルノックアウト細胞は硬 節には分化できるが、体節前半部を形成できないと考えられる。
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