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ダイオキシンレセプターのショウジョウバエホモログSpinelessの活性化が導くアポトーシスの 性質について


春本 敏之1  上田 龍2  西郷 薫3  安達 卓1,4

神大・発達1,国立遺伝研・無脊椎2,東大・院理3,科技団さ きがけ4


ほ乳類ダイオキシンンレセプター(Ahr)のショウジョウバエホモログであるSpineless (Ss)は、bHLH-PASファミリーに属する転写因子である。これまでの研究から、ss はショウジョウバエ脚及び触覚において先端領域のアイデンティティー決定に中心的な役割を持つことが明ら かにされている。
今回我々は、ショウジョウバエ翅原基上に異所的にss を発現させるとJNK、Caspase、Hidなどに依存したアポト?シスが惹き起こされることを見出した。このアポト? シスには、細胞自律的なものと、非細胞自律的なものがあり、後者の中にはモルフォゲンシグナリング勾配の 不連続が導くmorphogenetic apoptosis様の細胞死もしばしば観察された。また、Ahrとヘテロ二量体を形成して核内に移行するArntのショ ウジョウバエホモログTango (Tgo)のRNAi系統を用いた実験から、ssの異所的発現時にみられるアポト?シスが、脚及び触覚におけ る形態形成と同様にtgo 依存的であることが明らかになった。
次に、しばしばmorphogenetic apoptosis様の細胞死が惹き起こされる際に、どのようなモルフォゲン濃度勾配の不連続が生じているのか明 らかにする為に、ss 異所的発現がDpp及びWinglessのシグナル強度に与える効果について解析を行った結果、両者共が影響を受 けることが明らかとなった。さらに、ss は器官のアイデンティティー決定に重要な働きを持つことから、翅原基上にss を強制発現させることで器官の発生にどのような変化を与えるのかについても検証を進めており、報告する予 定である。
以上の遺伝学的解析の結果から、ほ乳類をはじめとして広く保存されているダイオキシンレセプターを介 したシグナリングと細胞死のメカニズムについて、新しい知見が得られることが期待される。


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