○網本 靖子1 児玉 理恵2 小早川 義尚1
九大・理・生物1,万有製薬2
刺胞動物に属するヒドラは、体制の単純さや再生力の強さなどから発生生物学におけるパターン フォーメーションの研究材料として使われてきた。 ヒドラの足盤形成では、足盤細胞がペダンクルの外胚葉性上皮細胞から持続的に分化し、一方では古くなった 足盤細胞が足盤の中央から脱落していき、一定の大きさの足盤を維持していると考えられる。このことからヒド ラの足盤形成のシステムは動物の組織の形や大きさを一定に維持するメカニズムを解析するよい系となる。 私たちの研究室では、ヒドラの足部形成のプロセスを分子レベルで解析するため、Differential Display of RT- PCR法を用いて足部で部域特異的に発現している遺伝子の単離を試みてきた。その結果、足部で部域特異的 に発現している遺伝子を単離し、ankletと名付けた。ankletはペダンクルと足盤の境界、つまり足盤の周縁部と それに接するペダンクル下部の外胚葉性上皮細胞で発現がみられた。足部再生中のヒドラにおいてankletは 再生初期には再生した足盤全体で発現がみられるが、徐々に再生した足盤の先端部では発現が消えていき、 再生完了時には通常のankletの発現パターンがみられる。外胚葉性上皮細胞が足盤細胞に分化すると考えら れる場所でankletの発現がみられることからankletは足盤分化に関与していると考えられる。これを確かめる ために、RNAiの手法を用いてankletの機能を調べた。ankletのcDNA全長に相当する2本鎖RNAをヒドラに導 入するとankletの転写産物が著しく減少した。ankletの機能を抑制したヒドラの足盤は通常の足盤よりも小さく なり、また、ankletの機能を抑制したヒドラの足盤再生速度は通常のヒドラに比べて遅くなった。これらの結果か らankletは足盤細胞への分化に必要であると考えられる。
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