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Wntシグナル下流の新規遺伝子V24の解析


木村 純  黒岩 厚

名大・院理・生命理


Wnt蛋白質は線虫からヒトに至るまで、動物の初期発生及び形態形成の様々な組織間相互作用 を必要とするプロセスで働く細胞間シグナル伝達分子である。Wntの細胞内シグナル経路を大別するとWnt/β -カテニン経路とWnt/Ca2+経路に分けられ、前者は転写調節に後者は収束伸長に関わることが 知られている。脊椎動物の形態形成においては初期発生の体軸、中枢神経、消化管、四肢パターンの形成等 でこのようなWnt経路が機能している。今回我々はニワトリ胚肢芽形成の研究を通じて、このWntシグナリング の下流に位置する新規遺伝子V24を単離しその発現調節と機能について解析を行った。
V24は当初肢芽特異的な発現を示すクローンとして分離され、肢芽においてはAERとその直下から背 側の間充織で主に発現がみとめられた。V24は肢芽以外にも尾芽、肺の気嚢、羽毛原基といった発生 の際に突起状の伸長がみられる場所で共通して発現がみられる。肢芽の背側外胚葉ではWnt- 7aが発現しており、Wnt-7aは肢芽間充織にβ- カテニンを介さない経路で背側の特性を授与する事が知られている。またWnt- 7aは肢芽背側間充織に転写因子のLmx-1を誘導するが、Wnt- 7a発現ウィルスの強制発現実験を行ったところV24もWnt- 7aによって異所的に発現を誘導されることが分った。そこでいくつかの他のWntファミリーメンバーについ てもV24の異所的な発現の誘導能を調べたところWnt-3aWnt- 7aと同様にV24の異所的な発現を誘導出来ることが確認された。
V24はそのアミノ酸配列に脊椎動物間で良く保存されている繰り返し配列を有しているが、それ以外に 機能を推測するに値するモチーフはみられない。そこでWNTシグナル伝達経路への関わりを中心に解析を進 めた結果、培養細胞系でV24はWNTのcanonical pathwayに対し抑制的に働くことが確められた。


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