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マウス耳介表皮更新単位の解析


亀田 隆1  中田 憲1  水谷 壮利2  寺田 邦彦1  伊庭 英夫2  杉山 俊博1

秋田大・医学部・生化学第一1,東大医科研・感染免疫・宿主寄生体2


表皮は基底層・有棘層・顆粒層・角質層からなり感染や乾燥などの外界からの脅威に対する最前 線の防波堤として機能している。このような性格上表皮組織は常に更新される必要がある。表皮のように成体 で常に更新されている組織には体性幹細胞が存在していると考えられている。体性幹細胞は特殊な細胞であ り、緩慢に分裂し、体性幹細胞自体と一時的に活発に増殖し最終分化細胞を生み出す細胞(TA細胞)の2種の 細胞を生み出すことで恒常的な組織の更新を可能にしていると考えられている。マウスの耳介や体幹の表皮 に関してはPotten博士らにより表皮更新単位(EPU)仮説が提唱されている。本仮説によれば表皮の更新単位 は各角質化細胞ごとで区切られており、角質化細胞直下の約10個の基底細胞のうち中央の1個が幹細胞で残 りがTA細胞であるとされる。我々は本仮説の正否を検証すべくマウス耳介表皮を実験材料に用いてin vitroならびにin vivoでの解析を行った。細胞の増殖性と形態を指標としたin vitroの解析からは表皮基底層における幹細胞の頻度はEPU仮説よりかなり低いことが示唆された。核移 行型LacZをコードしたレトロウイルスを用いたin vivoでの細胞系譜追跡実験からはマウス耳介表皮にはEPU仮説よりもずっと大きな更新単位が存在する ことを示唆する結果が得られた。以上の解析を元にマウス耳介における表皮更新単位に関する新たな仮説を 提唱したい。


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