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ニワトリ胚期ペプシノゲン(ECPg)遺伝子の転写調節領域の解析


綿貫 公美子  八杉 貞雄

都立・院理・生物


胃や小腸のような消化器官の発生において、上皮- 間充織相互作用が上皮細胞の分化に重要である。ニワトリ胚の前胃(腺胃)では、上皮の分化が明瞭になるの は孵卵7日以降で、上皮が間充織に陥入して腺を形成する。腺上皮細胞はembryonic chicken pepsinogen (ECPg)を発現し、腺を形成しない内腔上皮では粘液産生細胞マーカーであるchicken spasmolytic polypeptide (cSP)が発現する。ECPgとcSPの発現は完全に排他的であることから、前胃上皮細胞が2種類の細胞に分化 することが分かる。腺形成とECPgの発現に関与する間充織因子として、腺形成時に前胃間充織のみで発現 するBMP2の重要性が示された。腺上皮細胞におけるECPgの特異的な発現調節に関与する転写因子の同定 は、上皮の分化機構を解明するための手がかりとなるであろう。 これまでに、ECPg遺伝子の5'上流1.1kbpに転写調節に関わる領域が存在し、この領域のGATA結合配列が転 写調節に重要であることが明らかにされている。しかし、ECPg遺伝子の転写を調節する正確な領域は明らか にされていない。 そこで、ECPg遺伝子の転写に必要な領域をより詳細に決定するために、5'上流1.1kbpのdeletion解析およびm utation解析を行った。さまざまなfragmentをlacZ reporter geneに繋いだコンストラクトを作成し、electroporationによって5.5日胚前胃上皮細胞に導入した。培養2日後、 前胃腺上皮細胞でのlacZの発現を検出した。その結果、上流 -656?- 419bpが必須であり、この領域内に存在する3つのGATA結合配列へのGATA転写因子の結合が、腺上皮細胞 でのECPgの発現を協同的に調節していることが示された。さらに、間充織からのECPgの発現誘導作用にもこ の領域の存在が必要十分であることも示された。


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