○鯉渕 信孝1 谷山 義明2 金田 安史1 荻原 俊男2 森下 竜一1,2
阪大 医 遺伝子治療学1,阪大 医 加齢医学2
VEGF(vascular endothelial growth factor)は、血管及び血球の形成に必須な因子であることが、知られている。しかし、その詳細なメカニズムは、 現在のところよく分かっていない。そこで、今回我々は、アフリカツメガエルを用いて、VEGFが及ぼす血管及び 血球形成パターンの変化を観察した。 VEGFには、様々なisoformがあるが、その内、発生中の胚に強く発現しているVEGF122とVEGF170(それぞれ マウスのVEGF120, VEGF164に対応)のmRNAをインジェクションする事により、VEGFを強発現させた胚を作成した。いずれのmR NAをインジェクションした胚でも、ゼブラフィッシュやマウスなどで報告されているように浮腫が誘導されること が観察された。このことは、いずれのmRNAも機能していることを示していると考えられる。浮腫が誘導される 前に、それらの胚を血球マーカーであるグロビン遺伝子の発現パターンを観察した。その結果、VEGF170のm RNAをインジェクションした胚のみに、後方部の腹側血島領域で、グロビン遺伝子の発現が消失していた。さら に、血管マーカー(MSR, Fli, Tie- 2)でそれらの胚を染めてみたところ、グロビン遺伝子の発現が消えていた後方部の腹側血島領域で、血管が形 成されていることがわかった。このことは、腹側血島には2つの細胞群から構成されていることを示している。 つまり、VEGFの強発現に影響を受けずに血球に分化する前方部と、VEGFの強発現により、血球から血管へ と分化が変化する後方部からなることを示している。また、この現象は、VEGF170のmRNAをinjectionした胚の みでみられ、VEGF188では、観察されなかったので、VEGFはisoformの違いにより、血管及び血球形成に関与 する働きが異なることを示している。
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