○飯尾 明生1 森崎 隆幸1,2
国循セ・研・バイオ1,阪大院・薬・分子生理病態2
心臓の発生、心筋細胞の分化にはBMPシグナルが重要な役割を果たしていることが知られてい るが、レセプターや種々の細胞内シグナル伝達分子、核内転写因子などを含めたシグナルの調節メカニズム にはまだ不明な点が多い。とりわけこれらのシグナルの開始やフィードバックの制御機構は、心筋誘導のメカ ニズムを明らかにする上で重要と考えられる。そこで、BMPシグナルフィードバック機構に関与すると考えられ る分泌タンパク質をコードする遺伝子Sizzled に注目し、ニワトリSizzled cDNAを単離して発生過程での発現パターンを解析し、心臓の発生及びBMPシグナルとの関連を調べた。ニワ トリSizzledの発現はステージ3よりextraembryonic領域やlateral mesendodermで検出され、BMP- 2及び4の発現様式と非常に相似していた。その後のステージでは、Sizzledの発現は予定心筋領域のanterior lateral mesendodermで増強し、心臓特異的転写因子Nkx-2.5やBMP-2によって誘導されるFGF- 8の発現と良く似た発現様式を示したことにより、心臓形成との密接な関係が考えられた。そこで、ステージ5及 び6のanterior lateralあるいはmedial mesendoderm をBMP-2あるいはNogginで処理したところ、BMP- 2処理では心筋の誘導とともにSizzledの発現量が増加し、逆にNoggin処理では心筋分化の抑制とともに発現 が減少した。以上より、Sizzledは心筋分化においてBMPの制御下で発現が増減することによりBMPのシグナ ルを調節し心筋分化領域の範囲を規定しているのではないかと考えられた。
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