○三浦 重徳 開 祐司 宿南 知佐
京大・再生研・生体分子設計
Chondromodulin-I(ChM- I)はウシ胎仔骨端軟骨から精製された糖タンパク質で、軟骨細胞や骨芽細胞の増殖亢進活性とともに血管新 生抑制活性を示す。胚発生過程におけるその発現は軟骨性骨原基の無血管領域に特異的に認められ、血管 侵入部位である肥大化・石灰化軟骨層で消失する。今回我々はマウス初期発生におけるChM- Iの発現をin situ hybridization法により検討し、母性由来細胞である脱落膜が新たな発現部位であることを見出した。脱落膜は 着床により刺激を受けた子宮内膜繊維芽細胞が多核・肥大化し、基底膜様細胞外マトリックス産生細胞へと形 質転換したものであり、母体循環系と胚との間の透過障壁として機能している。胎生6.5日目ではMMP- 9を発現する栄養芽巨大細胞を取り囲むように胎盤外膜円錐および胚周辺の成熟した脱落膜において TIMP-3が発現しており、ChM-IはTIMP- 3よりも限局して胎盤外膜円錐周辺の脱落膜において発現が見られた。母体側からの血管網侵入が旺盛 となる胎生7.5日目においては、栄養芽巨大細胞でのMMP- 9は高いレベルで発現するようになり、それにともなってChM-Iの発現部位もMMP- 9発現細胞全体を取り囲むようにより広範囲となっていた。一方、TIMP- 3は発現部位には変化がないものの、その発現レベルは低下していた。胎生8.5日目ではTIMP- 3の発現はほとんど消失するが、ChM- Iは主に血管網侵入部位周辺で弱い発現が検出された。以上の結果から、ChM- Iの発現は胚着床後に起こる母体側からの血管網侵入にともない脱落膜においてダイナミックに変化する ことが明らかとなった。
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