○城所 知秀1 金井 克晃1 藤澤 正彦1 的場 章悟1 九郎丸 正道1 林 良博1 金井 正美2 川上 速人2 多屋 長治3 米川 博通3
東大・院農・獣医解剖1,杏林大・医・解剖2,(財)東京都臨床研3
哺乳類の性決定はY染色体上に存在するSry遺伝子により制御されており, Sryが未分化生殖原基において一過性(マウスにおいて, 12-27ts)に発現することにより, 精巣形成が誘導される。また, Sox9遺伝子はSryの下流で機能する精巣形成因子であり, 1)Sryの発現上昇と一致してSox9の発現量が雄特異的に上昇する, 2)ヒトSOX9変異の一部がXY女性を示す, 3)Sox9単独によりXX雄マウスを誘導できる- ことなどから, 現在のところSryの標的因子としてSox9が最も有力視されているが, 確証を得るまでには至っていない。 そこで我々は, Hsp70.3プロモーター領域とSry遺伝子を連結した発現ベクター(HSP-Sry)を用いて, XX雄の性転換を示すトランスジェニック(Tg)マウスを作出した。組織学的解析および半定量的RT- PCRによる解析から, 1)XX TgマウスでのHSP-Sryは, 正常XY個体でのSryの発現開始時期以前から未分化生殖原基内に恒常的に発現していること, 2)30ts(12.5dpc)のXXHSP-Sry個体において, 精細管形成が, 正常XY個体と比べ, 前/後部で遅延することが明らかとなり, 正常XY個体と比較してSryの発現量の弱いTgマウスであることが推測される。そこで, Sryの発現量の異なるXXHSP-Sry(低レベル), XY(正常), XYHSP- Sry(高レベル)3種の雄マウスを用いて, 11ts(10.5dpc)から18ts(11.5dpc)の未分化生殖原基におけるSox9の発現を検討した。その結果, XXHSP-Sry, XYHSP- Sryいずれの個体においてもSox9の発現は正常XY個体とほぼ同時期(13ts)において検出 されたが, その発現量はSryの発現量と相関してXXHSP- Sry<XY<XYHSP-Sryの順に高い発現を示した。 以上の結果は, Sox9の発現量はSryの発現量に依存して上昇することを強く示唆し, Sox9はSryによって直接制御を受けているという仮説を強く支持するものである。
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