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アフリカツメガエルp53転写因子はTGF-βシグナルと協調して体軸形成を制御する。


竹林-鈴木 公子1  F. J.1  徳森 大輔1  齋藤 朗2  渡部 徹郎2  宮園 浩平2  鈴木 厚1

広島大・院理・両生類研1,東大・院医・分子病理2


p53転写因子は、ヒトの癌抑制遺伝子として知られており、細胞周期の制御やアポトーシス誘導に 働くなど細胞内で多様な役割を担っている。しかしながら、胚発生期における機能はよく分かっていない。我々 は、発現クローニング法により、神経後方化活性を持つ因子として、アフリカツメガエル原腸胚期cDNAライブラ リーからp53遺伝子(xp53)を単離した。そして、xp53が、内胚葉および中胚葉の分化マーカーを誘導する活性 を持つこと、ならびにxp53がホメオボックス遺伝子Xhox3とMix.1の発現をタンパク質合成を介さず直接的に誘 導することを見出した。次に、初期胚におけるxp53の役割を知るために、ドミナントネガティブ型xp53(xp53:En )の過剰発現によるloss-of-function解析を行った。その結果、xp53:En mRNAを注入して内在性のxp53活性を抑制した腹側中胚葉は、背側化することが分かった。野生型xp53およ びxp53標的遺伝子Xhox3は、xp53:Enが内在性のxp53活性を抑制することにより背側化した腹側中胚葉を救助 したことから、xp53は腹側中胚葉の形成に必要であること、ならびにxp53はXhox3の上流で機能することが強 く示唆された。さらに、中胚葉の形成がTGF-βシグナルによって制御されていることから、TGF- βファミリーに属するBMPおよびActivinのシグナルとxp53との相互作用を調べた。その結果、xp53:Enを注入 して内在性のxp53活性を抑制した胚のアニマルキャップでは、いずれのTGF- βシグナルに対しても応答性が低下することから、xp53は、TGF- βシグナルに対する応答性を強めるために必要であることが分かった。以上のことから、xp53は、TGF- βシグナルと協調してホメオボックス遺伝子Xhox3とMix.1を直接誘導し、腹側中胚葉の形成を制御することが 明らかになった。


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