[1P020]

中胚葉誘導におけるNLK-STAT3の役割


大河原 美静1  三浦(兵頭) 純子2  白壁 恭子1  松本 邦弘3  上野 直人2  澁谷 浩司1

東京医歯大・難治研1,基生研・形態形成2,名大・理3


これまでに我々はMAPキナーゼ様のセリン/スレオニンキナ?ゼであるNLKがWntシグナル伝達 経路の転写因子であるTCFをリン酸化する事により、b- catenin/TCF複合体のDNA結合能を抑え、Wntシグナル伝達経路を負に制御している事を明らかにしている。 また、アフリカツメガエルの初期発生において、NLKがWntシグナル伝達経路が制御する体軸形成に関与して いる事も報告してきた。しかし、キナーゼ不能型のNLK mRNAをアフリカツメガエル胚で過剰発現させると、体軸形成以外に原腸陥入異常の表現型が見られ、生体内 においてNLKは他のシグナル伝達経路にも関与する事が示唆されていた。
初期発生において、原腸陥入 は分化した中胚葉の細胞を中心に行われ、内胚葉側で発現するactivin様の分泌因子がその分化の誘導に関 わっている事が証明されている。そこで、我々はNLKが初期発生においてactivin様因子の下流で中胚葉細胞 の分化誘導に関与しているのではないかと考え、アフリカツメガエル胚を用いて実験を行った。初期胚または アニマルキャップにおける過剰発現もしくはmorpholino-oligonucleotideによる翻訳阻害の実験から、NLKは activin様因子の下流で中胚葉細胞のマーカー遺伝子の発現に関与する事がわかった。一方、最近我々はYea st two hybrid法を用いて探索したNLK結合因子としてSTAT3を単離した。STAT3はJAK/STATシグナル伝達経路を構 成し、JAKキナ?ゼによってチロシン残基がリン酸化されると二量体を形成し、核へ移行して標的の遺伝子の 発現を誘導する因子である。本発表では、中胚葉細胞の分化誘導を制御しているactivin様因子とNLK、さらに はSTAT3の関係について考察したい。


Page Copyright (C) 日本発生生物学会 All Rights Reserved.