○斎藤 大介 井出 宏之 田村 宏治
東北大・院生命科学
脊椎動物の前肢/後肢identityは、各予定肢芽領域においてそれぞれ特異的に発現するTbx5/
4により決定されると考えられている。我々はこれらのTbx遺伝子の領域特異的発現制御に関与す
る組織を特定すべくニワトリ胚において微細操作および組織培養実験を行ってきた。今回、側板中胚葉内での
Tbx5/4の発現が沿軸中胚葉からのシグナルによって制御される可能性を示す。
st.12の予定前肢
レベルの体節2個を予定後肢レベルの体節領域に交換移植し、Tbx遺伝子の発現解析を行った。48時
間後の宿主の後肢領域において、Tbx4の発現の消失とTbx5の発現の誘導が見られた。キメラ
解析を行い、移植片の中に沿軸中胚葉以外の組織が含まれていないこと、またTbx5/4の発現が変化
する領域には移植片自体は寄与していないことも確認した。また、st.12ニワトリ胚の他のレベルの体節、つま
り予定首・脇腹および後肢レベルの体節、もしくは体節板を移植片として用いた場合、および発生段階の異な
る沿軸中胚葉を移植片として用いて同様の微細手術を行った場合、前肢レベルを用いたときと比べて後肢芽
におけるTbx5/4の発現パターンにどのような違いが生じるか観察した。以上の実験から、ニワトリ胚の
頭尾軸に沿って異なるレベルにある沿軸中胚葉は、肢芽領域におけるTbx5/4の発現制御に関して異
なる性質をもつことが示唆された。また宿主の後肢領域において異所的にTbx5が誘導されかつTbx
4の発現消失の見られたサンプルでは後肢の伸長が止まってしまうが、現在その原因を探るべく、肢芽の
伸長に関与する遺伝子の発現解析も行っているので合わせて報告したい。これらのことから、沿軸中胚葉のも
つTbx5/4の発現を制御する活性を中心に、正常発生において側板中胚葉内でTbx5/4の領域特
異的発現が確立される仕組みについて考察する。
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