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原条形成における細胞接着因子の発現の変動


立花 亜里  松崎 貴  猪原 節之介

島大・院生資・生物


鳥類では, 中胚葉は移入という運動様式により生じる。この過程において, 予定中胚葉細胞の性質は本来の上皮様から間充織様へと変化することは知られているが, この運動を引き起こす原因についてはまだ分かっていない。このダイナミックな形態形成運動が起こる背景に, 細胞間の相互作用, 特に接着性が変化している可能性を検討することはこの問題を理解する手がかりになると考えられる。 そこで本研究では, 細胞接着因子の1つcadherinの一種で, 間充織特異的に発現するとされるcadherin- 11に注目し, ニワトリ胚における経時的・空間的な発現の変動をWesternblot, 免疫組織化学, RT- PCRによって解析することにより, 鳥類中胚葉形成との関わりを調べた。 Westernblot, RT-PCRから, cadherin-11はタンパク質, mRNAレベルのいずれにおいても原条期で発現していた。そしてその発現量は中胚葉が形成される以前では ほぼ一定であるのに対し, 以降ではその2倍近くに達していた。これを免疫組織化学的に解析すると, Whole- mountによる胚全体でのCadherin-11陽性細胞の分布は胚体全域に及んだ。その中でも特に原条は濃染され, 原条の伸長とともにその領域も伸長方向に拡大した。さらに, その濃染領域は中胚葉形成の開始と同時期に原条から側方へと連続的に広がった。その詳細を組織切片で 確認すると, まず, 細胞内での局在は細胞種を問わず, 膜に局在していた。胚体全域で陽性細胞が観察されたのは胚盤葉上層と下層が染色されていたためであり, その染色域及び強度はstageが変わっても変化しなかった。また, これら以外でCadherin-11陽性を示したのは, 移入によって胞胚腔内に侵入した細胞集団で, この細胞は移動によって原条から側方へと広がっていくが, そのいずれも抗Cadherin-11陽性だった。このことから, Whole- mountで濃染される領域がstageの進行とともに原条から側方へと広がったのは, これらの細胞, つまり中胚葉細胞に起因すると思われる。 以上のことより, ニワトリ胚の中胚葉形成にcadherin- 11が関与している可能性が示唆される


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