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研究者による市民との交流イベントは, 研究者に何をもたらすか?
- 「ゲノムひろば」を例にして-


山岸 敦1,2  加藤 和人1

京大・人文科学研究所1,遺伝研・生物遺伝資源情報2


近年, クローン動物や再生医療など発生生物学に関わりを持つ話題がマスコミにとりあげられる機会が多くなってき た.このような報道は研究の応用面・倫理面にのみ重点が置かれており, 実際の発生研究が誰によって, どのような興味(目的)で, どのように行われているのかという情報までは伝わることが少ない.生命科学の発展が社会的な議論を呼ぶ ことは今後も増加すると思われる。従って, 一般市民が科学研究の実際を知る機会は重要であり, また研究者の側も, 一般の人々が専門研究をどのように感じているかを意識する必要がある.
現在, 大学や研究所による研究室公開や高等学校等への出張授業, あるいは生命科学系の学会が開催する一般講演などが盛んに行われており, 研究者自身が一般市民に向けて自らの研究内容を伝える活動の重要性が次第に認識され始めている.我々 は, これらの活動に加えて, 研究者と一般市民が直接交流できる機会, とりわけ研究者が市民の意見を聞く機会が広がることが望ましいと考える.研究に対する一般市民の見方や 考え方を知る機会を持つことは, 研究者が自分の研究と社会との関わりを見直すきっかけとなるだろう.
昨秋, 特定領域研究「ゲノム」4領域は, 市民との交流イベント「ゲノムひろば」を東京・福岡・京都の3都市で開催した.市街のイベントホールなどを会 場に行われたこの催しは, 研究者がポスターや実験器具・実験生物などを持ち寄って自分たちの研究を来場者に紹介し, また市民からの疑問や意見を直接研究者が知ることを目的に開催された.展示には100を越える研究室が参 加し, 計4600人の来場者が訪れた.本発表では、「ゲノムひろば」の概要を紹介し、参加者や来場者に対して行わ れたアンケート調査をもとに, 一般向けのイベント開催が研究者コミュニティに与える影響について考察する。


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