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ホヤを使ってみませんかIIホヤにおけるトランスジェニック技術


笹倉 靖徳  粟津 智子  松岡 輝美  佐藤 矩行

京都大・院理・動物


脊椎動物と同じ脊索動物門に属し、脊椎動物のプロトタイプと考えられているホヤの一種カタユ ウレイボヤCiona intestinalisはゲノムサイズが約155 Mbp、遺伝子数が15,800と非常にコンパクトなゲノム構成をしており、そのゲノムの塩基配列は既に明らかにな っている。また世代時間は2?3ヶ月と短い。以上のことからカタユウレイボヤは遺伝学に適した材料であり、そ の遺伝子機能の解析はホヤの発生のメカニズムの解明に必須であるだけでなく、脊椎動物の相同遺伝子の機 能の類推に役立ち、また脊椎動物の進化を考える上で重要なヒントを与えることが予想される。しかしながらホ ヤにおける遺伝学的手法の記載は驚くほど少なく、化学変異原を用いた突然変異体作製がなされているのみ である。われわれはホヤにおいてトランスジェニック技術を確立することにより、大規模な挿入変異体作製やさ まざまな遺伝子機能解析の手法の導入を目指している。トランスジェニック技術は挿入変異体作製に利用でき るが、それにより得られた突然変異体では、その原因遺伝子の同定が容易であるという長所をもつ。またこの 手法はエンハンサートラップなどの手法にも応用できるなど、きわめて応用性の高い技術である。われわれは Tc1/mariner superfamilyトランスポゾンの1つMinosがカタユウレイボヤ内で実際にトランスポゾンとしての活性を保持 していることを証明した。現在までにMinosを用いて実際にトランスジェニックボヤの作製に成功し、またエンハ ンサートラップラインを1つ得ているので、それらをもとに今後のホヤを使った研究の有用性を議論する。


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