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ES細胞・幹細胞の全能性・多能性を決めるマウス遺伝子群の網羅的探索2


野呂 知加子1  後藤 菜穂子1,3  大場 美奈子2  谷口 誠2,4  小幡 裕一1  森脇 和郎1  宮崎 均3  渥美 忠男2

理研・BRC1,理研・分子細胞2,筑大・遺伝子実験セ3,都立大院4


生殖細胞系列と体細胞系列の分岐は発生初期に起こり、全能性は生殖細胞系列とそこから樹立 された細胞株(ES・EC・EG)に受け継がれる。体細胞系列では、多分化能を持つ幹細胞から次第に分化能が限 局していき、最終的には1つの形質を持った細胞に分化する。しかし、昨今の幹細胞分化や再生の研究によっ て、このドグマに例外が見つかっている。例えば神経幹細胞や骨髄幹細胞が、細胞接着・細胞間相互作用など の条件によって、ES細胞に類似の多能性を示すという報告がある。従って分化能や分化の方向性とは、我々 が考えているよりはフレキシブルなもので、系列や胚葉の概念を越えているのかもしれない。
幹細胞について基礎的な情報を集め、分化能の実体に迫るために、我々は生殖系列および体細胞系列由来 の各分化段階にある幹細胞の、発現遺伝子群をプロファイルしてきた。方法としては、1)Affimetrix社の GeneChip U74 mouse genome setによるオリゴチップ解析2)NIA 15K mouse cDNA libraryのMicro Array解析3)cDNAサブトラクション法の3つのアプローチを行っている。
今回はES細胞の形成能および生殖細胞系列への組み込みについて、マウス系統間で差が見られる点に注目 し、GeneChip解析を行った結果を主に報告する。各系統由来のES細胞や生殖細胞に特徴的に発現する遺伝 子群を選び、RT- PCRによって発現確認、他の幹細胞を含めて発現レベル解析を行った。こうした研究をすすめ、これまでES細 胞が形成されないとされているマウス系統や他種に、形成のキーとなる遺伝子を導入することで、ES細胞を 樹立することを目指している。


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