○渥美 忠男1 大場 美奈子1 野呂 知加子2 井川 洋二3 天沼 宏1
理研・分子細胞1,理研・筑波・BRC2,理研・井川研3
これまで、あらゆる種類の体細胞に分化できるのはES/EC細胞だけであった。しかし最近成体の 骨髄、筋肉、脳などから内胚葉系、中胚葉系、外胚葉系など多様な細胞に分化できる幹細胞が発見された。こ のいわば体細胞型万能細胞はES細胞に匹敵する分化能を有しながら、ES細胞とは異なり、造腫瘍性はなく、 かつ特定のタイプの細胞への分化を培養条件の制御によって、特異的に誘導できるという特徴がある。我々 が以前に樹立したATDC5細胞はマウスのAT805EC細胞より得られ、「軟骨前駆細胞株」として今日広く用いら れている。しかしATDC5は軟骨以外に未同定の色素細胞にも低頻度に分化でき、軟骨にのみに方向付けられ た細胞ではない。そこで今回ATDC5の分化能の広がりを調べるために、まず、ATDC5を神経幹細胞の分化誘 導条件で培養したところ、短期間にほぼすべての細胞がβ3チューブリン(TUJ1)陽性の神経細胞に分化するこ とを見いだした。このことからATDC5は体細胞型万能細胞である可能性が推測される。現在、軟骨細胞、色素 細胞、神経細胞以外への分化能(たとえば肝臓、血管内皮など)の有無を調べている。 またATDC5はEC細胞AT805の培養中より偶然得られた細胞であったが、AT805を薬剤処理することによって、 ATDC5に形態的に類似し、かつ長期間安定に増殖し続ける細胞を、繰り返し得られるようになった。
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