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ヒドラ内・外胚葉層形成には内胚葉性上皮細胞の高運動性が重要である


高久 康春1  針山 孝彦2  藤澤 敏孝1

国立遺伝研1,浜松医大2


腔腸動物ヒドラ個体を単一細胞まで解離した後、再集合体をつくらせると完全なヒドラに再生する 。この過程で、内・外胚葉性上皮細胞が再配列する現象を「細胞選別現象」と呼び、細胞間接着を中心に広く解 析されてきた。これまでに我々は、単離した内胚葉性上皮細胞の高い運動性が細胞選別現象に寄与すること を明らかにした(昨年度本大会)。 本研究では単一内胚葉性上皮細胞の運動性が、ヒドラ内・外胚葉層形成に果たす役割を検討した。(1)解離単 一細胞を顕微鏡下で接着させ動態を解析すると、内胚葉性上皮細胞は、仮足様構造を四方に伸縮させ高い運 動性を示す。(2)内胚葉性上皮細胞の仮足様構造はファロイジンで強く染色され、アクチンによる運動機構の 存在が示唆された。アクチンの重合を阻害するサイトカラシンで処理すると仮足は退縮する。(3)内胚葉と外 胚葉を分けた後、外胚葉性の解離再集合体をつくり、単一の内胚葉性上皮細胞を接着すると外胚葉へ侵入移 動する。内胚葉性上皮細胞をサイトカラシン処理したときのみ侵入は起きない。(4)内胚葉と外胚葉性の解離 再集合体どうしを結合させると、内胚葉は内側・外胚葉は外側へ移動し成体ヒドラに再生する。内胚葉をサイト カラシン処理すると移動は起きないが、細胞選別が完了し(12hr)二層構造が形成(48hr)されるとサイトカラシ ンによる阻害は見られなくなる。これらの結果は、内胚葉性上皮細胞の高い運動性が、細胞選別現象および 続く二層構造形成に重要であることを強く示唆する。


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