○吉野 潤 栃内 新
北大・院理・生物
爬虫類以上の脊椎動物では大規模な脳の再生はみられないが、無尾両生類のアフリカツメガエ
ル Xenopus laevis
では、変態直後までを含む幼生のうちは除去された終脳をほぼ完全に修復・再生することができる。終脳前方
を部分除去した場合、幼生では露出した脳室周囲の細胞により脳室開口部が塞がれた後、これらの細胞の活
発な分裂によりその領域の皮質が肥厚し、完全に近い脳が再生する。しかし、成体に同様の処置を施した場
合は、除去後30日経っても開口した脳室が塞がれることはなく再生も進まない(第35回本大会)。
成体の脳
室周囲に分布する細胞を免疫組織化学的に調べたところ、ほとんど再生が起こらなかったにもかかわらず、幼
生の場合と同様に、終脳の部分除去後は脳室周囲において活発な細胞分裂が見られることがわかった。また
、ここで分裂している細胞は哺乳類の神経系未分化細胞などのマーカーとして利用されているMusashi1やGF
APに対して陽性で、ラジアルグリア様の形態をしていた。幼生と成体終脳の部分除去実験では、脳室周囲の
細胞が開いた脳室を塞ぐかどうかに大きな差が見られたことから、我々は終脳が再生できるかどうかは、分裂
能を持った脳室周囲の細胞が脳室を塞ぐことができるかどうかにかかっているという仮説を立てた。
そこで
、哺乳類の神経幹細胞の培養法として一般的なニューロスフェア法を用いて成体終脳の細胞を培養することで
、この方法で増殖する神経幹細胞がアフリカツメガエル成体の脳にも存在するかどうかを検討した。また、これ
までの研究により成体の脳細胞によって脳組織の再構築が可能であることがわかっているので、存在が期待
される神経幹細胞をニューロスフェア法によって大量に増殖させた後に、終脳を部分除去した成体脳に移植す
ることで終脳を再生させることを試みた。今大会ではこれらの実験結果について報告する。
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