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マウス卵巣への遺伝子導入:特にpreantral follicleへの導入を目指して


谷河 麻耶1  木村 穣1  佐藤 正宏2

東海大・医・分生21,東海大・総医研2


卵巣は卵母細胞とそれを囲む濾胞細胞及びそれらを支える間質細胞とから成る。卵母細胞は卵 巣におおよそ4,000個あるとされるがその内排卵されるのはほんの数%しかない。卵形成や卵母細胞と濾胞細 胞との相互作用を分子生物学的に解析するには、卵巣細胞への遺伝子導入が一つの手段として考えられる が、これまでそのような試みは殆どない。おそらく卵巣が上記細胞群で緊密にパックされており、その中にDNA 液を注入しても卵巣内に充分入らず卵巣から漏れ出すため、卵巣への遺伝子導入は無理ではないかと思われ ていたからと考えられる。しかし、実際、trypan blue(TB)等の色素をmicropipetteを用いてマウス卵巣の中心部に注入すると、最初は液が入りにくい感じだが 、徐々に卵巣内に入ることが判った。TBの分布を調べると、濾胞や間質部分が殆ど青く染色されていた。この ことはDNA等の液を卵巣内に注入すれば、DNAがどの卵巣細胞にも浸透し、その細胞内に入り込む可能性が あることを示唆させる。実際、EGFP発現plasmid DNAを注入し、直ちに矩形波を発生させるBTX T820 electroporatorを用いてin vivo electroporation(EP)を施すと実験毎に変動があるものの20%程の濾胞がモザイク的に遺伝子発現を示した。こ の方法ではどちらかと言うと、未熟な濾胞がtransfectされている印象であった。今回は卵巣表面に発達するpr eantral follicleを標的に遺伝子導入を行う系を考案した。卵巣被膜内にEGFP発現plasmid DNAを投与し(大体10 μlまで入る)、直ちにin vivo EPを施した。2日後、卵巣を取り出し、EGFP発光を観察するとpreantral follicleの幾つかはモザイク的にではあるが、発光を示した。本法の改良法と応用性について述べたい。


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